ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は

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鉄、銅、チタン、マグネシウムなどさまざまな合金が使用されている鋳造工程で、テスラのギガプレスはアルミ合金を使用しており、アメリカとドイツの工場ではイタリア・IDRA製、中国工場ではLK集団製の大型ギガプレス機により、フロント・リア部のアンダーボディ生産を実現した。

一方、巨額な設備投資、サイクルタイムの長さ、変形・伸びを含む機械的特性の悪さ、異材接合の難しさなどが、ギガプレスのネックとなっている。

また、押し出し材の使用量が多くなり、BEVの軽量化に繋がらない可能性もある。さらに、事故を起こした場合に修理ができない大型アルミダイカストの品質維持などの課題も、クリアする必要もあるだろう。

上海にあるテスラのギガファクトリー(写真:Tesla)

現在、中国では機械的に締結する接合方法として採用されているフロードリルスクリュー(FDS:Flow Drilling Screw)は、技術的難易度が下がりつつあるが、シーラーやメディアを採用したことより、製品のウェイトは上がる傾向だ。

大手プレスメーカーは、「難易度の低い機械締結を普及させたうえで、本格的な異材接合技術のイノベーションが起きれば、ウェイト問題が解決する」という。

テスラが提唱したホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)とアルミの締結は、一見してFDSに類似しているものの、溶接融合や固相接合などの製造工程、マルチマテリアルに対応した異材接合技術が求められる。

現在、地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される。

日本プレスメーカーの事業戦略は?

テスラや中国メーカーが積極的に一体成型技術の開発に取り組んでいる一方、日本の自動車メーカーは導入が遅れている。

また、ギガプレスを採用するホットスタンプ事業は設備投資が大きいため、既存設備を抱える日系プレスメーカーは、日本自動車メーカーから新製法を採用する部品の受注を確保できなければ、テスラを含む一体化成型を採用するBEVメーカーへの対応は難しいだろう。

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