ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は

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日系プレスメーカーはこれから、どのような対策を取っていけばいいのだろうか。

短期的には、アンダーボディ向けの中小型ダイキャスト部品を中心に、一体成型の需要は増加し、車体の一部はアルミと鉄のハイブリッド構造(異材接合)とすることでコストダウンを図れるだろう。

そうした異材接合技術の改善が行われ、高強度部材を鉄などに置き換えれば、それなりのコスト競争力を維持する可能性も考えられる。

既存モデルのボディを流用するホンダの中国向けBEV(筆者撮影)

ただし、そのためには日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる。

中長期的に見ると、中国地場プレスメーカーの成長や技術・設備の進化にともなって、コストダウンが実現できれば、一体成型が業界主流になっていくと予測される。こうした技術変化を見据えて、プレスメーカーは技術路線を再検討する必要があるだろう。

実際、日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している。日本大手化学・成型機械メーカーのUBEは、一度に成型できるアルミ部品製造装置を開発した。

手をこまぬいている時間は、もうない

自動車メーカーがギガプレスを導入すると、系列部品メーカーからの部品調達が減ってしまうというトレードオフがあるが、一体成型化が進むのは間違いない。

中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEVが続々と投入されるだろう。

そうなれば、ガソリン車ブランドが独占している大衆車市場を、BEVが塗り替えることになると予測される。日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ。

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湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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