中国人の大半は歴史問題など気にしていない 日本人は「本当の中国」を知らなさすぎる

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小林:中国の人はおおらかというか、先に述べたように合理主義者です。なので、過去の歴史を教えられ、反日教育をすり込まれてきても、それと現実の豊かな生活とは別なものと考えようとします。そのことを日本人は知らない、知ろうとしないというのは中村さんのご指摘のとおりだと思います。

たとえば、私は取材で南京には何度も訪れていますが、料理はうまいし、街並みも古都の趣があるので、南京という街を非常に気に入っています。ただ、その話を日本の友人や知人にすると、みな一様に「えっ」という表情をします。

彼らの頭にはまず「南京大虐殺」がイメージされるのですね。「日本人が南京へ足を踏み入れて大丈夫なのか」といった感じです。ただ、南京の人たちにとって、南京大虐殺は過去の歴史のひとつになっています。

もちろん、戦争や歴史の話題になれば、彼らだって気分がいいはずはありませんが、普段から日本や日本人を恨んでいるような人は、極めて少ないでしょう。南京の人たちが日本人と話すときも、わざわざ戦争や歴史の話題を出してくることはほとんどないですしね。

南京の人々の「苦難の歴史」をどこまで知っているか

中村:共産党の悪口は至るところで耳にしますけれども、日本を悪く言う人はほとんどいませんよね。ところが、日本人の多くは中国の人たちは、日本のやられたことをいつまでも恨んでいると思っている。中国のごく一部の人たちを除いては、歴史問題などまったく気にしていませんよ。

小林:南京を例に話せば、「日本にもひどいことをされたが、共産党にはもっとひどいことをされた」。「日本よりも共産党のほうが許せない」という人たちも少なからずいます。なにしろ、1958年から毛沢東が進めた大躍進政策では、犠牲になった国民の数は5000万人にも上るとも言われていますから。その多くが餓死です。戦争でもないのに、自国の指導者による経済政策の失敗によって、それだけの人が亡くなったわけですよね。

また、南京という街は、中華民国の時代に国民党政権の首都だったこともあって、「エリートの街」「知識人の街」として知られています。街路樹も綺麗に整備されているし、病院や大学も多い文化都市です。それゆえ、1966年に始まった文化大革命(文革)の際にも、多くの犠牲者を出すことになりました。

もちろん、だからといって日本がしたことが許されるわけではありません。南京大虐殺の犠牲者の数については諸説ありますが、南京に派兵した事実は間違いないですから。

私が言いたいのは、日本人にとっては、「南京」イコール「大虐殺」ですが、南京の人にとっては、それ以降にもさまざまな苦難の歴史があるということです。彼らはそれらすべてを乗り越えて、現在、目の前の豊かな生活を享受しようとしています。非常に現実主義であり、合理主義です。

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