日野と三菱ふそうが経営統合へ向かう2つの要因 親会社のトヨタとダイムラーがCASE技術で協業
協業へ向けた話し合いが始まったのは昨年後半、持ちかけたのはダイムラーからだった。「ゼロエミッションに向けて加速するには、複数の技術に投資しなければならない。電池、燃料電池、将来的には水素エンジンだ。これら経済的に成り立たせるには規模がカギになる」(ダイムラーのダウムCEO)。
自動車業界は目下、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる100年に1度の変革期にある。個社では対応しきれないため、業界内外を問わずさまざまな提携が進んでいる。とりわけ、台数が少ない商用車は1社だけでは巨額投資に見合った収益を上げることができない。
ダイムラーは北米、欧州が主力で、日本を含むアジアは2005年に傘下に収めた三菱ふそうが主に担当している。ただ、過去にリコール隠しや脱輪による死亡事故が発覚し経営危機に瀕した三菱ふそうは国内3位と大手では最下位。2017年には「e Canter」を投入し、国内の小型EVトラックで先行したものの、今後の莫大な投資を行っていくには「パートナー、そして規模感が必要だ」と三菱ふそうのデッペン社長。
不正発覚で将来を描けないでいた日野
対して、国内2位の日野は昨年3月にエンジン不正が発覚。信用は失墜し、国交省からはエンジンの量産に必要な型式指定を取り消された。リコール費用や顧客、仕入れ先への補償といった認証関連特損がかさみ、2021年度は847億円、2022年度は1176億円と3期連続の赤字に沈む。現在も、国内向けのトラック・バスのうち2割相当(不正発覚前を母数)を生産できないままでいる。
不正問題への徹底対応を最優先せざるを得ない一方で、次世代技術の開発も待ったなし。だが、トヨタやいすゞ自動車による中小型トラックのCASE技術を共同開発する合弁会社「CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)」から除名されている。さらに、この4月には自社の経営に専念することを理由に、フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下の商用車メーカー、トレイトンとのCASE技術開発の提携解消も発表した。
将来の展望が描けなかっただけに「不正対応では日々の活動で手応えを感じてきているが、これからのカーボンニュートラル対応を同時に実現することは単独では厳しいとずっと悩んできた。今回の4社の枠組みを千載一遇の機会と捉えている」と日野の小木曽社長。
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