いすゞ、EVトラック最後発でも見せた余裕の理由 最大手の強み生かす、社長交代で新体制も発表
「世界の物流業界において重要な課題で社会を進化させる大きなチャンス。責任をもって応えることがいすゞの使命だ」
3月7日、いすゞ自動車の片山正則社長(4月から会長)は新車発表会でこう意気込んだ。
この日、いすゞは中型トラック「フォワード」と小型トラック「エルフ」のフルモデルチェンジ、そして同社初の量産型EVトラックを公開した。発表会での目玉は、小型トラック「エルフ」のフルモデルチェンジと同社発のEVトラック「ELF EV」の市場投入だ。
EVトラック最後発のいすゞ
だが、いすゞはEVトラックの販売で後れを取った。三菱ふそうトラック・バスの次世代モデル「eCanter」が3月から、そして日野自動車もドライバーに負担の少ない低床型で普通免許で運転できる「デュトロZ EV」を2022年に販売開始している。
商用車の電動化競争で勝ち抜けるのか。「『エルフ』の強みは変わらない。新型車種は半導体の調達のめどがつき、販売台数は純増すると見込んでいる」と片山氏は余裕を見せた。
というのも、いすゞは小型トラック市場で圧倒的な強みを持つからだ。同社の「エルフ」は、2001年から2020年まで、国内市場のシェアの40%程度を維持し、他社の追随を許さない。一般的に商用車は大幅なシェアの変動は見込みづらい。電動化開発が少し遅れた程度ではそう簡単にいすゞの牙城を崩せないというのだ。
むしろ、顧客ニーズや技術動向を見極めたうえで、満を持して発表した自信作だという。いすゞがEVトラック発売まで何もしていなかったわけではない。今回のEVトラックは車両としては完成していたが、3年間の顧客企業からのモニター走行や実証実験を重ねてきた。こうした顧客の接点は今後の電動化においてもいすゞの販売において活用されるはずだ。
顧客である物流企業はリスクを分散するために複数ブランドのトラックを保有することがある。EVトラックに関心はあるものの、「EVトラックの選択肢が少なすぎる」と頭を抱えていた事業者にとって、いすゞのトラック販売開始は選択肢が増えるという明るいニュースにもなった。
また、既存のディーゼルエンジンの「エルフ」もフルモデルチェンジに踏み切った。EVだけでなくエンジン車の需要はまだまだ強いとみて、新車展開に力を入れる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら