いすゞ、EVトラック最後発でも見せた余裕の理由 最大手の強み生かす、社長交代で新体制も発表
新型EVトラックのコンセプトは「選べる自由」だ。トラックは架装や積載量などユーザーのニーズが多様であることも念頭に、キャブ(居室)の大きさやバッテリーパックの個数のバリエーションを豊富にした。たとえばキャブは、車両総重量3.5トンから7.5トンまで3種類あるほか、車格に応じた、2パック、3パック、5パックの3種類のバッテリー仕様を用意し、航続距離が100キロメートルから170キロメートルまで選べる。
2024年度には、EVトラックの種類を増やし、高所作業車などの特装架装に対応した車両や、荷室への移動が可能なウォークスルーバンも発売する。
新車の販売で完結しないビジネスも追求している。EVの運用に知見を持つ伊藤忠商事の協力のもと、「EVision」というサービスも始めた。EVではユーザーの事業所に充電器を設置したり、電力契約をしたりといった、いままでなかったサービスが必要だ。そのため導入検討から充電管理や運行管理まで一貫してサポートできる体制を整えて、エネルギーマネジメントへのニーズとセットにして提案する。
8年ぶりの社長交代へ
新型車の発表会と同じ週の10日、いすゞは社長交代を発表した。片山氏は代表権を持つ会長兼CEOとなり、南真介専務執行役員が代表取締役社長兼COOの体制をとる。
社長交代とはいえ、「片山路線」が変わることはなさそうだ。新社長の人選は「ポスト片山」というより、新体制でのツートップの相手として南氏を選んだという色彩が強い。
実際、南氏はこれまで片山氏の側近役として活躍してきた。
片山社長がアセアン現地事業統括担当だったころ、南氏はタイから海外へのピックアップトラックの輸出事業を担当していた。2021年にボルボ・グループからUDトラックスを買収した際も、南氏は最前線で交渉にあたった人物だ。南氏について片山氏は「仕事を受け取ってくれたとき、とにかく抜群の実行力がある」と評価する。
社長交代は電動化などの技術革新に向け、社内組織改革を加速させることを外部にアピールする機会になりうる。
片山氏は、トヨタをはじめ国内外のメーカーとのアライアンス強化を通し、商用車の技術革新の種まきをしてきた。片山氏は先代社長と同じく8年間務めた。「ワントップは非常に負担が重く、ツートップのほうが確実にいすゞの成長に貢献できる」と説明する。中長期的戦略や技術革新については技術畑出身の片山氏が担当する一方、経営企画は南氏にゆだねる形だ。
片山氏が社長就任時の2015年は売上高が1兆円台だったが、UDトラックスの買収などを経て3兆円近くにまで伸びた。一方で最近は、半導体不足により昨年には小型トラックの国内シェアが33.9%(2022年3月末)に落ち込むなど、苦戦も強いられている。新体制で足元の販売を伸ばしながら研究開発を進められるか、両者の連携と手腕が問われる。
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