「マンガは子供のもの」と思う人が知らない"真実" 大人の鑑賞に耐えうるリアルな作品が増加の訳

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── マンガの実写化に伴い、原作となるマンガ自体もリアリティを重視する方向に動いたということでしょうか。

山内:そうなります。そして大きな流れの二つ目は、コロナ禍以後の変化です。コロナ禍ではマンガがかなり多く読まれました。コロナ禍で家から出られない中で、マンガには閉塞した現実から距離を置き、作品に没入できる良さがあったのです。

そして、“せっかくなら、楽しみながら何かが身につく方が良い”という効率を求める欲求に対して、コスパ良く、家で他人の人生を味わえるマンガはとても適していたんです。2019年に紙の売り上げを逆転したマンガの電子書籍も、コロナ禍で一気に普及し、売り上げが大きく上振れました。

2014〜2021年の「コミック推定販売金額推移」(公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所調べ)

── 電子マンガの普及は、読み手にはどんなメリットがあるのでしょう?

山内:読者にとっては、過去の名作も電子マンガによって簡単に読めるのはうれしいことではないでしょうか。紙だけの時代は、絶版になると手に入れることが難しかったですから。

一方、作り手にとっては、読者が選ぶ作品として、過去の作品と現在の作品が同列になったことで、過去の名作と同じ土俵で戦わないとならなくなりました。そうなると、昔の名作に勝つ価値を、自分の作品の中に何かしら感じてもらう必要があるので、作品の質が上がった側面もあるんです。

海外では「マンガ=アート」という価値観も

── もう一つ、国外の動きとは何ですか?

山内:“マンガ=アート”という文脈です。パリのルーブル美術館がマンガを「第9の芸術」と位置づけた(※)ことはご存知の方も多いでしょう。

※ルーブル美術館では、2005年よりフランス語圏のマンガにあたるバンド・デシネへ門戸を開き、「ルーヴルBD(バンド・デシネ)プロジェクト」を始動。「第9の芸術」とは、「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学(詩)」「演劇」「映画」「メディア芸術」に次ぐ芸術という位置づけです。

ヨーロッパではストーリーよりも絵の方が重要視されてきて、フランスのマンガにあたるバンド・デシネは画家が描いてきたんです。その文脈から日本の作品で大きく評価されたのが、『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦、集英社)でした。

一方で、日本のマンガは、もとは小説の延長線上で、絵としてのクオリティよりストーリーの方が重要と考えられていました。ただ、その表現がとても面白く、高度だったので、海外からの人気が高まったんです。2018年にはパリで「MANGA⇔TOKYO展」(※) が、2019年には大英博物館で「マンガ展」が開催され、“マンガもアート”という見方が徐々に定着していきました。そういった動きも含めて、マンガの裾野は広がり続けていると思います。

※日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品に焦点をあて、31日間で3万人以上を動員。2020年にはその凱旋展「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が六本木の国立新美術館で開催された。

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