「マンガは子供のもの」と思う人が知らない"真実" 大人の鑑賞に耐えうるリアルな作品が増加の訳
── また、描き手が大人の読者を想定することで、変わってきたことはありますか?
山内:リアリティの重視という点から、マンガに専門監修の方が当たり前につくようになりました。昔は、マンガは作家さんの想像の世界(ファンタジー)を表現すればよかったので、マンガに監修者はあまりつかなかったんです。
それが今は、研究者の中にもマンガが大好きな方は大勢いて、メインストリームにいる研究者でも、「マンガの監修は、頼まれればぜひやりたい」という方が増えています。結果、作家さんと編集者と専門家のコミュニケーションによって作品が練られるので、フィクションであっても、よりリアリティのあるものが作れるようになりました。
── 歴史ものや医療ものでは特に効力を発揮しそうです。
山内:江戸時代にタイムスリップした現代の脳外科医の奮闘を描く『JIN-仁』(村上もとか、集英社)という幕末医療マンガも、連載開始の決定打になったのは、当時の技術水準で、ペニシリンという薬剤(抗生物質)を作ることは可能だという裏付けがとれたことだったそうです。
その確証を得るために、作家さんと編集者は、医学監修と歴史監修の先生方とチームを組んだ。そうした背景もあったから、リアリティのあるタイムスリップ医療ものとして大人の鑑賞に耐えうるものになり、実写化もされてヒットしたのでしょう。
そんなふうに、マンガというメディアの力を多くの人が実感する中で、“コストパフォーマンスもタイムパフォーマンスも良く、楽しみながら学べるもの”としてのマンガの地位が確立されてきたように思います。
── リアルに描かれているからこそ学びにもなるし、ビジネスや会話のテーマとして、また、若い世代にとっては進路を考える上でも役に立ちますね。山内さんも、マンガ好きが高じて税理士をやめ、現在の仕事に就かれたとのことですが、バイブル的な作品はありますか?
山内:ひとつに絞るのは難しいのですが……『火の鳥』(手塚治虫)は“−人間とは何か−”が全部詰まっている哲学的な作品だと思います。読むたびに新しい気づきがあるので、今でも年に1回は読み返しています。
文/浜野雪江 写真/島本一男 編集/岸澤美希(LEON.JP)
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