正しさより「優しさを選ぶ人」人生のゴールが違う がんの悩みを乗り越えた人が手にする生き方
自分の損得で言うのなら、客観的であることを選んだほうがいいでしょう。
でも、もし人間関係を良くするのなら、人を傷つけないことのほうが大切です。「正しいことよりも優しいことを選ぶ人」は、好かれるからです。
ただ、それがわかっていても、自分への評価を気にすると、なかなか実行できないというのが現実でしょう。
けれど、がんになると考えが変わります。死を意識するようになるからです。
がん患者の悩みは人間関係の悩み
がんのことを語り合うはずの「がん哲学外来」の場で私に、
「がんになった母との関係で困っていて」
あるいは、
「夫が冷たいんです。がんよりもそれがつらい」
といったふうに、人間関係の相談をしてくる人がよくいます。実は、がん患者の悩みの多くは、人間関係の悩みなんです。
これまでがんとあまり縁のなかった人には、「人間関係なんてがんとは何のつながりもないだろう」と思われがちですが、実はそうでもないんです。がんをきっかけに、それまで当たり前だと思っていた日常生活にほころびが生じるからです。
例えば、両親のがんをきっかけに、親子関係が揺らいでしまい、それまでの関係ではいられないことがあるんです。
まず、親の看病をどうするか、同居を考えなくてはならないのか、といった問題が現実的になってきます。すると、否応なく、親と自分との関係が問い直されるんです。
そして、今の自分の暮らしを犠牲にしても親を助けるのか否か、そんな残酷な選択を迫られることも珍しくありません。
さらには、親が死ぬかもしれないという不安が襲ってきます。なにしろ、それまでは、いて当たり前だと思っていた人がこの世からいなくなるかもしれないのですから、大げさに言えば、自分がそれまで住んでいた世界が崩壊するような心細さを感じる人もいるんです。
このように、がんという病気の発覚をきっかけにして、親子の関係が揺さぶられるわけです。
夫婦関係についてもそうです。
「あんな冷たい人だとは思わなかった」
と、自分ががんになったとき、それまでは大して気に留めていなかった夫や妻の性格が耐えがたいと感じる人は多いんです。
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