工場で「過酷労働と暴言」8浪の彼が感じた恐怖心 いじめや引きこもり、彼の壮絶な人生に迫る

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その反省を生かした彼は、ここから毎日、何年も家にこもっての勉強を始めます。志望する大学の中には、TOEICの点数で英語が免除になる大学もあり、つらい日々の中で、彼は2014年9月から2016年1月までの1年4カ月間でTOEICの問題を合計1163時間をかけて1万3000問を解ききり、490点から840点まで上げました

その過程で2015年に受けた横浜国立大学は落ちてしまったものの、2016年には満を持して神戸大学と金沢大学に出願。

「やり切った。これ以上やっても伸びない」と思うほど勉強に時間を費やしての受験でした。しかし、結果は両方不合格。この結果を受けたこっしーさんは、親からの要望や金銭的な要因もあり、派遣社員として働いてお金を稼がなければいけなくなりました。

それでも、彼は「受験を諦めるつもりはなかった」と力強く語ります。なぜ、ここまでがんばれたのでしょうか。その理由を聞いたところ、「自分の人生が浮かばれないと思ったから」との返事が返ってきました。

「このまま何もないまま終わっていったとしたら、何のために生きていくのかわからないから、何としても(受験に)勝たないといけないと思ったんです」

派遣社員がモノのように扱われる工場

こっしーさんは受験費用を稼ぐために食品工場で、派遣社員として働きます。

この食品工場で派遣社員がモノのように扱われることを目の当たりにした彼は、より勉強への意識を高めたと言います。

「工場には週4回ほど勤務していましたが、肉体疲労でクタクタになりました。でも、いい歳のおじさんやおばさんが、『ちゃんとやれ!』と怒鳴られたり、暴言を吐かれたりしているのを見て、より自分の将来が怖くなりました。だからどれだけ疲れていても机に向かって手を動かしました」

こうしてこの年、ついに彼は神戸大学、金沢大学の編入試験に合格し、神戸大学の法学部に3年次編入することができたのです。21歳から受験勉強を重ね、8浪でようやく迎えた28歳の春でした。

神戸大の学位記(写真:こっしーさん提供)

「仕事をしていたこともあって、学力を伸ばすことはできませんでした。前年はわずかな差で落ちていたことや、そのときの学力を維持できたから受かったのだと思います」

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