妊婦の6割が「出生前検査」を受ける米国の悩み レジェンド産婦人科医が語る「最新事情と混乱」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
Fetal Medicine Foundation of Americaのサイトより

「日本は、相談体制が整っていないところにNIPTが入ってきました。NIPTが採血だけで簡単にできる検査だったので、濫用されないための体制整備をめぐる議論が起こりました。そこで、検査施設に一定の基準を満たすよう求める認定制度が日本医学会にできました」

当初の認定制度は、「35歳以上」という制限があった。また施設基準が厳しく、施設数も増えなかったので、制度の枠外で誰にでもすぐNIPTを提供する内科や美容系のクリニックがでてきた。

新しい認証制度で参加施設が増加

2022年に、国が参画する新しい認証制度が稼働し始めてからはようやく施設数も増え、カウンセリングを受けても不安が消えない場合は、34歳以下でもNIPTを受けられるようになった。

しかし、国が20余年の沈黙を破って厚労省に出生前検査の専門委員会を組織したり(現在は子ども家庭庁に移管)、認証制度に参画し、NIPTを希望する妊婦に認証施設を選ぶよう促す広報活動を行ったりしているのは、アメリカでFDAが乗り出して警告を発していることと被る。

日本は、NIPT導入を機に出生前検査の体制がよくなってきたが、それは“以前に比べればよくなった”という話であって、日本の認証外施設でNIPTを提供している医師たちは産科医ですらない。妊娠や胎児は彼らの専門外だ。左合氏は言う。

「これが心臓手術なら、“医師でありさえすれば誰が執刀してもいい”とは誰も思わないでしょう。基本的にそれは出生前検査も同じで、専門家による対応が必要であることをわかってほしいと思います」

日本でもアメリカでも、妊婦に対して専門家の必要性をどのようにわかりやすく説明できるかが、問題解決への重要なポイントとなる。

関連記事:「出生前検査」への意識、認証施設拡大で変わるか

*1 Committee Opinion No. 693: Counseling About Genetic Testing and Communication of Genetic Test Results/Obstetrics & Gynecology 129(4):p e96-e101, April 2017. | DOI:10.1097/AOG.0000000000002020
https://journals.lww.com/greenjournal/Fulltext/2017/04000/Committe く
e_Opinion_No__693__Counseling_About.49.aspx
*2 Genetic Non-Invasive Prenatal Screening Tests May Have False Results: FDA Safety Communication
https://www.fda.gov/medical-devices/safety-communications/genetic-non-invasive-prenatal-screening-tests-may-have-false-results-fda-safety-communication

河合 蘭 出産ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かわい らん / Ran Kawai

出産ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。カメラマンとして活動後、1986年より出産に関する執筆活動を開始。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院等の非常勤講師も務める。著書に『未妊―「産む」と決められない』(NHK出版)、『卵子老化の真実』(文春新書)など多数。2016年『出生前診断』(朝日新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事