最近相次ぐ「脱マスク」報道に決定的に欠けた視点 車内トラブル、教員指導、アンケート調査……

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ネット上で報じられる記事のなかには、「マスクをつける人とつけない人の両者が互いの主張をぶつけ合う状態のほうがPVを稼ぎやすい」という理由で、あえてあいまいな報じ方でとどめているものもあるでしょう。その点はメディア側の問題点ですが、そのような営業戦略が通用してしまう背景に、政府や自治体などの姿勢があります。

そもそも「個人の判断」という方針が漠然としたもので、対立や分断を招くきっかけとなっていました。感染が再拡大したときのリスクや、反発を招くことを恐れているのか、人々に丸投げして責任から逃れるような姿勢が、あいまいな言い方でとどめて対立や分断を招く記事の根源になっているのです。

たとえば、政府や自治体が「個人の判断」ではなく、マスクを外したくない人の理由に寄り添う言葉を添えながら、もう一歩踏み込んで外すことを伝えていたら、記事の報じ方も変わったのではないでしょうか。

連休明けからマスクを外す人が増えたことで、化粧品、洗顔料、カミソリ、オーラルケア用品などの売り上げが伸びている、あるいは、顔を出すことでおしゃれの意識が高まり、服や小物などが売れているなどの記事が見られるようになりました。各業界への影響があり、そこで働く人や家族がいることも、マスクをつける人とつけない人の対立や分断を招きやすい理由の1つとなっているのでしょう。

近い将来わかり合えるときが来る

いずれにしても、今さら「コロナ禍でのマスク生活がなかった」ことにはなりません。性格、事情、悩みなどに個人差がある以上、「今すぐ変えろ」も「今すぐ変えるな」も簡単にはいかず、事を急ぐほど、傷つき、行き場を失う人を生んでしまうでしょう。

たとえば、「マスクをしていたって、していなくたって、どっちでもいいじゃないか」と思えずストレスを感じるくらいなら、「マスクをしている(していない)人は苦手」と割り切って、いったん距離を置いてもいいのかもしれません。

「それも分断ではないか」と感じるかもしれませんが、あくまで暫定的な措置。人間の事情や心境は日々変わりゆくものだけに、近い将来、両者がわかり合えることは十分ありうるでしょう。少なくとも関係の修復が難しいところまで対立してしまうよりはいいような気がします。

このコラムにはマスクに関する主張はありません。書いている私自身、マスクをつける人とつけない人のどちらもいるのが自然なことと思っています。コロナ禍が長引いたこともあって元の状態に戻るには、ある程度の時間が必要なのかもしれません。だからこそ、どちらの人も焦って対立や分断をあおるような記事に乗せられないように気をつけてほしいのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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