そのほかでは、新型コロナ感染者数をマスクの「着用率20%」「着用率50%」「個人の判断に委ねる前」の違いでAIが予測したデータを紹介した記事などもありました。
ただ、これらの記事のほとんどが起きたことやアンケートの結果を書くだけで終了。公共交通機関、飲食店、小売店、エンタメ施設など、多くの場所でマスクをしている人とマスクをしていない人の割合に差がなく、半々のような状態に感じる今だからこそ伝えてほしいことが抜けているのです。
対立や分断を招く材料を与えている
今、大切なのは、真逆の両者が「対立しない」「分断されない」こと。しかし、現在報じられている記事で、そこにふれているものはほとんどありません。まるで、「いや、そうではない」「絶対にこうすべきだ」などと互いの主張をぶつけて対立するための材料を与えているようなものが多くを占めているのです。
真逆の考えを持つ両者がネット上に書き込んでいるのは、「マスクをする」「マスクをしない」それぞれの理由。
マスクをする人は、「高齢者と接するから」「基礎疾患や病歴がある」「妊婦なので」「インフルエンザの予防のため」「鼻炎だから」「メイクが面倒」「無用なコミュニケーションを避けたい」「外すこと自体に慣れてなくて無理」「マスクを取ってガッカリされるのが怖い」「まだ通勤ラッシュのときはつけたい」「会社ではつけておいたほうが何かと都合がいい」。
マスクをしない人は、「そもそもする理由がない」「つけていた今までがおかしかっただけ」「こんなに暑い中でマスクをしていたら健康上危険」「肌が荒れるし、メイクも崩れる」「高齢者と基礎疾患がある人だけつければいい」「子どものために大人はマスクを外すべき」「日本人特有の同調圧力がある」「マスク依存症の人には強く言わなければ変えられない」。
どれも一理ありますが、それぞれの事情や心境があり、一方的な主張で他人の心を動かすことは難しいもの。マスクをつけない人が「つけている人のマスクを外させたい」。逆に、マスクをつけている人が「つけない人につける理由を認めさせたい」。相手側の事情や心境を慮るより、自分側の主張を通したいという気持ちが強いから、記事をきっかけに強い言葉をぶつけ合ってしまうのでしょう。
マスク関連の記事は、それぞれの事情や心境、意思や選択を尊重すること、この件で対立しないほうがいいこと、分断されないようにしたいことなどにふれていないのです。
もし「相手側を変えたい」としても、イソップ物語の『北風と太陽』のように強硬な言葉ではなく、相手を尊重するような優しさを感じてもらわなければ難しいのではないでしょうか。マスクをつける人とつけない人が半々に近い今だからこそ、無用な対立や分断を避けること、そのためには相手側に自分の主張を押しつけないことまでをしっかり報じてほしいのです。
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