日経平均が今後も3万円を維持できると読む理由 世界的に製造業の底打ち感が強まっている
それに対してPBR1倍割れの企業による自己株買いは、BSに計上されている自己資本よりも低い株価で自己株を取得するため、そのディスカウント(PBR1倍割れの部分に相当する額)の分だけ自己資本が増加する。
そのためBPS増加につながり、PBRを低下させ、PBRでみた株価を一段と割安にする効果がある。同時にEPSは増加(PERは低下)し、ROE上昇にも寄与するため、上記のような副作用はない。
もちろん、これとは別の観点から「自社の株価は経営陣が妥当と判断する水準よりも割安である」とのメッセージを送るシグナリング効果や、単純に株式需給の改善に貢献するという効果もある。日経平均採用銘柄の半数超がPBR1倍割れとなっている現状、自己株買いが株価上昇に効果を発揮したということだろう。
世界的にも製造業が3月に底打ちした可能性
またそれとは別に、ここへ来て世界的に製造業の底打ち感が強まっていることも効いているだろう。
世界的な製造活動のサイクルについて、筆者は「3月底説」を唱えている。アメリカ経済はFED(アメリカの連邦準備制度)の金融引き締めの副反応、すなわち銀行貸出態度の厳格化によって企業の資金繰り環境が悪化するといった不気味な材料が多くなっている反面、日本株との関係が深い製造業については、そのサイクルに反転の兆しが認められている。
確かに4月のISM製造業景況指数は47.1と依然低水準であるが、それでも3月からは0.8ポイント改善している。また1~3カ月先の生産活動を読む上で有用な新規受注・在庫バランスに目を向けると、1月を底に反転基調が明確化しつつある。新規受注が停滞する中でも在庫の圧縮が進んだことが背景で、先行きの生産活動が上向きやすい環境にあると言える。この間、類似指標の製造業PMIも底打ち感を強めている。
また、この3月底説はIT関連財の生産集積地である台湾にも共通する。台湾の貿易統計によると4月の輸出金額は前年比マイナス13.3%と依然大幅なマイナスだが、スマホやPC向けの需要が停滞する中でも中国経済の回復などを背景に1~3月期からは回復しており、こちらも3月が「底」になっている。こうした構図は輸出受注統計でみても同様であった。先行きについてはどうであろうか。
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