「アメリカ株は今後も回復が続く」と言い切れるか 「利上げ打ち止めと経済再加速」シナリオの死角

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はたして、今後もこうしたアメリカ株高は続くのだろうか。株式市場は、FRBの利上げ打ち止めと、その先の経済再加速を織り込み始めたという解釈が可能である。

だが長期金利上昇と株高が同時に動くには、経済成長が上向きかつインフレが十分落ち着くことが必要だ。こうした経済局面が訪れるには、早くて1年以上時間を要するだろう。実際には、仮に経済が上向けば、インフレ警戒姿勢が強いFRBの利上げが続くはずだが、このシナリオを株式市場は軽視し始めたようにみえる。

また、最近のハイテク株の上昇の理由として、「生成AI」の誕生による技術革新が新産業を産み出すなど、将来への期待が評価されているとの説明も聞かれるようになってきた。

筆者はこのシナリオを論評する知見を持っていない。だが、こうしたシナリオが登場しつつあることは、株式市場の過熱感の強まりを示しているかもしれない。

日本株が今後も他国市場を上回る条件とは?

ところで、アメリカ株市場の底堅さもあって、5月以降の日本株は、TOPIX(東証株価指数)、日経平均株価の双方で、平成バブル崩壊以降の最高値を更新する上昇となり、年初来リターンで見てもアメリカ株を上回っている。

メディアなどは「日本株復活」を想起させる現在の株高について、複数の要因を挙げている。実際には2022年以降、「円安が進むと日米相対株価(TOPIX÷S&P500で計算)が上昇する関係」はとくに変わっていない。よって、為替市場での円安とそれを実質的に支持する形になっている日銀の金融政策が、5月からの日本株高(アウトパフォーム)の最大の要因だと筆者は考えている。

逆に言えば、2022年にメディアで報じられた「悪い円安」という批判は的外れであり、日本企業全体の業績にとっては、円安はプラスである状況は変わっていない、ということだ。このため、日本株が今後もアメリカ株など他の主要市場を上回る状況が続くには、植田和男総裁率いる日本銀行の慎重な政策姿勢への信認が保たれるかどうかが決定的に左右するだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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