「肝斑患者の42%が“妊娠をきっかけに発症した”とする海外の文献もあります。はっきりしたメカニズムはわかっていませんが、妊娠やピルの内服などをきっかけに、女性ホルモンによりメラノサイトが活性化されてメラニンが増加し、肝斑が生じると考えられています」(山本医師)
ただ、女性ホルモンだけが原因ではないともいう。
紫外線、寝不足などの生活習慣の乱れ、ストレス、過度な洗浄やマッサージなどの物理的な刺激も要因となる。「シミを隠そうとして何度もファンデーションやコンシーラーをこすりつける人もいますが、そうした肌への摩擦も悪化につながります。コロナ禍では連日のマスクの刺激によって悪化するケースが増えました」と山本医師は注意を促す。
ヒゲのように口まわりにできる型も
肝斑はシミができる場所によって、主に以下の4つの型に分かれる。
このうち最も多いのは頬骨にできるタイプだが、いくつかのタイプが組み合わさっていることもある。口のまわりにできるケースは割合としては高くないが、まるで鼻の下にひげが生えているかのような印象を与えるケースもあり、患者さんの悩み度は高い。
「『これも肝斑なんですか?』とびっくりされる人もいます。このように一般にイメージする肝斑とは異なるタイプもありますので、気になる症状があれば、皮膚科医に相談してください」と山本医師は話す。
先に挙げた老人性色素斑(いわゆる一般的なシミ)と肝斑が大きく異なるのは、その治療法だ。
「老人性色素斑はレーザー治療や光治療などで効果が認められることが多いですが、肝斑は注意が必要です。不適切な設定でレーザーや光治療を行うことで、肝斑が悪化し、余計に濃くなってしまうこともあります」(山本医師)
したがって、治療の基本は色素沈着を抑制する作用があるトラネキサム酸とビタミンCの内服だ。まずは2カ月をめどに内服する。
「効果が現れるのが2カ月目ぐらいからで、『肌のトーンが明るくなった』『くすみが減った』と話される患者さんが多いです。半年ほど続けると60~80%程度の患者さんに改善効果が見られます。肝斑は完全には消えませんが、メイクで隠れる程度に薄くなります。ご本人が満足されれば、そこでおおむね治療は終了です」(山本医師)
治療では塗り薬も使われることがある。メラニン色素の産生を抑え、シミを薄くする効果のあるハイドロキノンや、皮膚のターンオーバーを促進するトレチノインなどだ。
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