「よく理解できましたね。それじゃあ、限界効用がどれくらいになるまで食べれば、総満足度が最大になるでしょう?」
「それは0に決まってますよ。そんな当たり前のことを聞くんですか?」
チャンミンがしたり顔で答えた。
「そうね! チョコレートパイを1つ食べたときの満足度は、食べた数が増えるにつれて逆に減っていきますが、追加される満足度がプラス(+)であれば、総満足度は高まりつづけます。追加される満足感がなくなるまで、つまり限界効用が0になるまで食べると、総満足度が最大になるのです。これをグラフにしてみましょうか?」
「追加される1つに対する満足度の変化と、総満足度の変化の関係を見てみると、理科の時間に習った加速度と速度の関係と似ているのに気づきませんか? 速度は、加速度が落ちていってもだんだんと上がっていきますよね。加速度がプラス(+)なら、プラスの程度は減ったとしても速度自体は上がっていくものだからです。『プラスで始まった加速度がしだいに低下する。速度はいつ最高になるか?』という問いの答えが『加速度がゼロのとき』なのと同じですね」
「本当だ。科学と経済って似てるんですね!」
ソナが興奮した表情で言った。
ラーメンのマーケティングも同じ理屈?
「ところで、限界効用がしだいに減ることを『法則』とまで言っているのだから、何かに応用できなくてはなりませんよね? どういうときに役立ちそうかしら? みんながオーナーになって、何か売ると考えてみて」
全員、ぽかんとしてナ先生を見つめた。
「スーパーでこの法則を使った価格を見たことがないかな?」
しばらくしんとしていたが、ソナが叫んだ。
「あっ、わかった! インスタントラーメンです! ラーメン1袋は100円だけど、10袋入りだと700円、っていうふうに売りますよね。これが限界効用逓減の法則を適用したものですね」
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