「美しくなりたい」努力の"残酷"な費用対効果 労働経済学の権威が教える美の経済学

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でもまあ、そういうやり方で何とかなる部分もある。人が美しいと感じる顔には、顔の対称性以外にもいろいろな特徴が含まれているからだ。若い人の容姿は、歳のいった人の容姿よりも高く評価されがちだ。

だから手術で青春の泉を見つけようというやり方は、他人の目に映る自分の容姿をよりよくする助けになる。それでも、そういうやり方では、あまり大きな改善には至らない。

ひょっとすると単純に、整形手術はおカネがかかる割に人を見違えるほどには美しくできないってだけなのかもしれない。ひょっとするとできるのかもしれないが、おカネの面でも痛みや苦しみの面でも、容姿をよくするためのコストは大きすぎて、そんな手術を受けようという人はあまりいないのかもしれない。

韓国の整形手術を研究して得られた結果が、そういう可能性を示唆している。ほとんどの人にとって、手術で容姿を改善しても、得られる経済的な利益は手術にかかるおカネには程遠く、ましてや手術を受けて心にかかるコスト、つまり「痛みや苦しみ」たるや、まったく見合わないということだ。

オシャレな服や化粧、髪型の効果は小さい

整形手術では私たちは美形に変身できないのだとしたら、あるいは私たちは手術の費用を十分に払えないのだとしたら、あるいは私たちは美しくなれるほどの手術の痛みには耐えられないのだとしたら、ひょっとすると、もっと単純なやり方のほうがいいのかもしれない。

つまり、もっといい服を着て、もっといいお化粧をして、もっときれいに髪をセットして、そんなやり方だ。「勝負服」とか「美顔メイク術」とかばかりを扱うコラムが新聞や雑誌にあったりする。

そういうコラムには、おすすめの服やヘアスタイル、マニキュアなんかが出てきたりもする。そういうことにおカネを使えばうまくいくんだろうか? 手術以外の美容法にもっとおカネを使えば、私たちはもっと美しくなれるんだろうか?

上海で行われた調査が、女性がそれぞれ服や化粧品、ヘアケア、そのほかの美容に毎月いくらつぎ込んでいるかを調べている。美容にまったくおカネを使わない女性が平均的な額を使うようになっても、評価は3.31点から3.36点にしか上がらない。

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