ドラッカーが「最高の未来学者」と評される所以 チャーチル首相も絶賛した「歴史を読む力」
白川:3つめは、ドラッカーは、社会にしても組織にしても、その動きを理解するときに、人間観察からスタートしていること。たとえば、生産性を上げるためにアウトソーシングが大事だと言われますね。では、アウトソーシングをしたらなぜ生産性が上がるのかというその説明として、ドラッカーの本に具体例があって、たとえば病院では、「リネンサービス」や「病院の清掃」をはじめ、広い意味でのロジ周りが少なからぬコストを占めている。
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しかし、病院でいくらロジ周りを非常にうまくやった人がいても、その人が病院長になることはない。だけど、それがアウトソーシングされて、それ自体を専門とする会社があれば、どれだけ早くモップをかけられるかなどに長けた人が社長になれる。だから生産性が上がる。それを利用することがアウトソーシングだというふうに書いている。
この説明って言われてみれば当たり前で、それがどうしたと思われるかもしれませんが、要するにそういう理解の仕方、つまり人間の行動からスタートしている。この観察がすばらしい。ドラッカーの本を読むとそういう例がたくさん出ていますよね。もっともその瞬間は「いいこと言っているな」と感じて、すぐ忘れてしまうのですが(笑)。そういう人間観察の魅力ですよね。これを学びました。
エコノミストではなくフィギアマン
小島:1つエピソードを述べますと、私は一度だけ「小島さん、今何と言った?」と叱られたことがあるんですよ。「エコノミストとして、あなたはどう思うか?」と質問すると、「おまえ、俺をエコノミストだと思うか」と言ってね。「じゃあ、先生、エコノミストをどういうふうに定義しているんですか」と聞くと、「フィギュアマンだ」と言いました。数字だけ見る人です。
ここに人間が6人いるとき、経済学者はこれを「6」としか見ない。しかし、みんな世代も生活も考えも違う。それを忘れてしまって全部数字でとらえる。それがいつの間にか経済学になってしまったと。しかし、そうした経済学ではうまくいかない。人間を見なくてはいけない。組織は、企業も社会もその原点に人間がある。人間が集まって家庭があり、家庭があって社会がある。そのなかでまた組織が生まれて企業があったり、国があったりする。しかし原点は人であると。