"奇跡のフォント"開発者の逆境だらけの8年間 「嫌われてもいい。やりたいことは絶対やる」

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最近はね、分厚い脳・神経科学の専門書を買いました。1万5000円もするのに、本屋さんに置いていないから中身が見られなくて、買うのを悩んでいたんです。

そうしたら、会社の福利厚生で費用の補助が出ることがわかって、速攻で取り寄せました。

いざ手元に届いたら図がいっぱい載っていて、もう、それだけでワクワク。

理解できるのに何年かかるだろうって感じだけど、まずはその本を読まないとって思っています。

「学び方は人によるけど、私は書かないと覚えられないので、こうやってノートに書いています」(高田さん)(写真:Woman type)

たくさん学んで、いろいろな引き出しを持てるといい

うちの息子は、大学はがむしゃらに勉強しなくても卒業単位さえ取れればいいと思っているけど、今は世の中が目まぐるしく変わっていて、学ぶことは一生続くのに、学べる時間がたくさんあるときに勉強しないのはもったいないなと思います。私が代わりに、大学に行きたいです(笑)

それに、やりたいことがあったら、学ぶのは楽しいですよ。

たくさん学んで、自分がやりたいことを納得できるようにやって、そうやって若いうちにいろいろな引き出しを持てるといいんじゃないかな。

「みんなと同じにしなきゃいけない」と思い込んでしまうと、それしか考えられなくなっちゃうし、1つのやり方だけだと行き詰まることもある。

『奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語』(時事通信社; New版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そうではなくて、学び方も含め、いろいろなやり方を知っているほうが強いですよ。だから、「こうすべき」と決めてかかる上の人の言うことはそんなに聞かなくていいんじゃない?(笑)

とくに20代は、自分のやり方をためていく時期かなと思います。新しいことは30代でも40代からでもやれますからね。そのためのストックをつくるといいと思います。

何なら私も、これからだって新しいことをやりたいですよ。

私はもうすぐ60歳で定年を迎えますけど、健康でいられる定年後の10〜20年の間に何を選択するか、今は逆算して考えているところ。

チャンスがあれば大学に行くのもいいかもしれないし、研究者の皆さんと一緒に新しい発想のUDフォントについて研究もしてみたい。

この先は若い頃のように興味の向くまま何でもやるっていうわけにはいかないけど、社会で生きるさまざまな人たちに、分け隔てなく情報を伝える方法を考えていきたいですね。

<プロフィール>高田裕美さん
女子美術大学短期大学グラフィックデザイン科卒業後、ビットマップフォントの草分けである林隆男氏が設立した株式会社タイプバンクに入社。32年間、書体デザイナーとしてさまざまな分野のフォントの企画・制作を手がける。2017年 モリサワ社に吸収合併後、書体の重要性や役割を普及すべく、教育現場と共にUDフォントを活用した教材配信、講演やワークショップ、教育系の雑誌や学会誌への執筆、取材対応など広く活動中。2023年に初の著書『奇跡のフォント』を時事通信社より出版
Twitter

企画・取材・文・編集/天野夏海 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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