"奇跡のフォント"開発者の逆境だらけの8年間 「嫌われてもいい。やりたいことは絶対やる」

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UDデジタル教科書体の開発にはたくさんの方の協力がありましたが、みんなが最初から好意的だったわけではありません。

でも、自分の思いを誠実に伝えていくうちに、だんだんと協力者になってくださる方が増えていきました。

(写真:Woman type)

頑張らせてもらえないことが悔しかったことも

最初のタイプバンクに入社したころも、先輩が助けてくれたんですよ。

当時、女性は残業をさせてもらえなかったんです。女の子だからって気を遣ってくれていたのだと思うけど、私は同期の男性と同じように頑張らせてもらえないことが悔しくて。

だから社長に異議を申し立てて残業するようになったんですけど、通勤に片道1時間半くらいかかっていたから、遅くまで仕事をすると電車がなくなってしまう。

残業するにも限界があって、それもまた悔しかったんです。私自身は、仕事をしているというより、楽しいことに打ち込んでいるという感覚でしたから。

そうしたら、会社の近くに住んでいる女性の先輩が「大変だね」って合鍵を作ってくれて。

私の布団も敷いておいてくれて、夜中に静かに先輩の家に帰っていました。

もちろん、先輩に迷惑がかかるので1カ月後には会社の近くで1人暮らしを始めましたが、かわいがってもらってありがたかったですね。

それに、時代は変わっていきます。

それこそ私が社会に出た頃は、コーヒーを入れるのは女性の役割で、「〇〇さんは砂糖2つとミルク」なんて暗記して、みんなに配っていました。

でも、今は飲みたい人が自分でコーヒーを用意するのが普通でしょう? それだって、私もその1人ですが、納得できない慣習を変えるために戦ってきた多くの人がいたと思います。

そうやって世の中や社会の考え方や価値観は変わっていきますからね。

それなら、時間がかかっても、反対があっても、自分の心に正直になって、やりたいことを優先したほうがいいんじゃないかなと思います。

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