「自分の居場所がない」から抜け出す魔法の言葉 人間関係の悩みの9割は「ほっときゃいいよ」

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その戸惑いが、がんの人には「冷たい」「よそよそしい」と映っているだけというのはよくあることなんです。

そんな場合、気にしないでいれば、そのうち職場内の関係は元の良好な状態に戻ります。

また、実際に冷たい態度をとる上司や同僚がいるかもしれません。けれど、その場合でも、やはりこう言います。

「ほっときゃいいよ」

なぜなら、そうした人が冷たいのは、がんとは関係なく、もともとそうだったからです。

自分と気の合わない人というのは、必ずいます。それまでは会社の上司や同僚が気の合わない人だと気づきにくかっただけで、がんをきっかけにはっきりしただけなんです。そうした場合、人間関係という意味では、がんの前後で何も変化していませんし、別に何かをする必要はありません。

世の中にはさまざまな人がいますし、その全員と仲良くならなければならないわけでもありません。気の合わない人とは仕事で必要な範囲で協力できれば十分ですし、無理に好きになる必要はないわけです。

この世の中に、大慌てする必要のあるほどに大事なことはそうそうありませんから、たいていのことは「ほっときゃいい」ということなんですね。がん治療中に職場の人間関係で起こる悩みは、ほとんどの場合、気にしないでいるほうがいいようです。

「看板かじり」から脱却するチャンス

なかには、がんの治療中に、第一線の業務を任されていた人がサポート役に回されたり、閑職に配置転換されたり、転勤になったりすることもあります。

これらの会社の対応は表向き、がんになった社員の治療の便宜のため、ということになっていますが、がんになった人には、必ずしもそうではないのではないかという疑念が起こることがあります。そして、

「会社はもう、私のことなんか要らないんじゃないか」

と自分の居場所がないと思ってしまう人もいて、極端な場合、こんな絶望感に襲われる人もいます。

「これまで苦労して築いてきた地位がなくなる。ああ、私はがんで人生が狂ってしまって、すべてを失うんだ」

確かに、会社での地位を失うことは、一見、人生が狂ったかのように思えるかもしれません。けれど、地位や名誉などの肩書を失えば、人生そのものが失われるかのように嘆くのは、どうでしょうか。

私はこんな人のことを、「看板かじり」と呼んでいます。

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