「放送離れ」でTVer利用者が増えている驚きの現実 キー局決算で見る「テレビ業界再成長」の可能性

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5局の放送収入だけを取り出して合計すると、2019年度の8461億円が2020年度にはコロナ禍で急落し、2021年度に持ち直したものの2022年度は7999億円とコロナが落ち着いても元の水準からカクンと下がってしまったのがわかる。

それとゴールデンタイムのPUT(総個人視聴率)の推移を重ねると興味深い。2020年度は巣篭もりで視聴率が爆上がりしたが、人々がテレビをネットにつないでYouTubeやNetflixを見ることに目覚め、2021年度以降はダダ下がりした。この傾向は昨年上期決算で見受けられた傾向であることは当時記事にして伝えた。その傾向が結局年度の最後まで続いた。それどころか、視聴率はまだまだ下がり続けており、放送収入も取り戻せそうにない。コロナによる日本経済の混乱で乱高下した放送収入が、急落傾向で定着してしまった。

もう「若者のテレビ離れ」どころの話ではない。コロナが終わると「日本人のテレビ離れ」が決定してしまったのだ。

ただし正確に言うと、テレビ番組をまったく見なくなったわけではない。決まった時間にテレビをつけてチャンネルを合わせる習慣が失われているものの、テレビをTVerなど配信で見る人は多い。だから「テレビ離れ」ではなく「放送離れ」なのだ。

そのため今、TVerの利用がものすごい勢いで増えている。決算資料にもTVerを含む「配信広告収入」の数値を表記する局も出てきた。

(筆者作成)

テレビ放送に代わって増加したTVerの利用

ドラマ「silent」の人気が話題になったフジテレビは前年比73.8%増だった。「AVOD(広告付き動画配信)三冠王」という新しいタイトルをぶち上げ、その王座に輝いたことを自負している。この数年いい話があまりなかったフジとしては涙を流して喜びたい気分だろう。

TVerをはじめとする配信サービスはスマートフォンで多く見られるが、先述の通りコロナ禍を機にテレビをネットにつないでさまざまなサービスを楽しむ人が増えた。今後のテレビ局の成長を握るのが、このネットにつながったテレビ、CTV(Connected TV)での番組視聴だといわれる。

ネットにつながったテレビのサービスは2015年のNetflix上陸をきっかけに日本でもさまざまなサービスが登場してきた。最も利用者数が多いのは無料のYouTubeだが、有料定額サービスが脚光を浴び、Amazon Prime Video、Disney+などのアメリカ勢に、U-NEXTなどの日本勢も奮戦してきた。

日本勢は日本テレビのhulu、TBS・テレビ東京・WOWOWの共同出資によるParavi、フジテレビのFOD、テレビ朝日のTELASAが主なプレイヤーとみられてきたが、2月にParaviのU-NEXTへの統合が発表され状況が変わってきた。

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