「放送離れ」でTVer利用者が増えている驚きの現実 キー局決算で見る「テレビ業界再成長」の可能性

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また昨年、Netflixが廉価版の広告付きプランを強引にローンチし物議を醸したように、VODで有料定額型が見直され始めている。最近、「CTV市場」という言葉が広告業界でバズワード化しているが、それは有料のサービスではなく、広告付きサービスのほうについての話題であることが多い。広告業界にとっての新しい商品となるからだ。

つまりここへ来て、映像配信サービスのテーマが無料のほうにシフトしつつあるのだ。

広告市場としての映像配信サービス

記事(ドコモのdTV改めLemino「テレビの次」になれるか)でも書いたが、NTTドコモの新サービスLeminoも、有料と無料のどちらかを選べるうえに、「将来的には無料領域を大きくしたい」と担当者は述べていた。元々あったABEMAも有料プランはあるが基本は無料の広告モデル。

こうしたさまざまな映像配信サービスがテレビで主に見られるようになると、広告市場として大きく成長するかもしれない。テレビ局もTVerをテレビで視聴してもらって、その成長を軸に巻き返したいところだろう。

電通が2月に発表した「日本の広告費2022」によると、インターネット広告費における「テレビメディアデジタル」分類は2022年(暦年)で358億円だった。このうちかなりがTVerだとみていい。まだ地上波テレビ広告費全体の1兆6768億円の2%程度にすぎないが、前年比40.9%増と伸び率は驚異的だ。乱暴な試算だが、毎年同じ伸び率で成長したとすると2030年には5561億円にもなる。これから先の放送収入の落ち込みを補う可能性はある。

実際、アメリカのテレビ業界は収入の5分の1以上をCTV広告収入で得ているとの資料もある。いつもアメリカから5年遅れるといわれる日本のテレビ業界も、同じように再成長してもおかしくはない。

ただ、アメリカのCTV広告市場の伸びを支えているのはFASTだといわれている。Free Ad-supported Streaming TVの略で、無料広告型のストリーミングテレビ。VODとは違って、「これを見たい」とユーザーが選んで見るのではなく、たくさんのチャンネルから「ドラマ」とか「スポーツ」「ニュース」などと選ぶと次々に番組が流れてくるサービスだ。

日本でいうとケーブルテレビやスカパーの多チャンネルサービスが近い。ただ、それが広告がつくことで無料で視聴できるのが違う。

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