韓国キアの中国合弁「管理職を一時帰休」の苦況 中韓関係悪化やEVシフトの遅れ響き販売激減

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悦達起亜の販売台数はピークの8分の1に落ち込んだ。写真は11月に中国で発売予定の「EV5」のコンセプトモデル(キアのグローバル・ウェブサイトより)

韓国の自動車大手、起亜(キア)の中国合弁会社で経営不振に陥っている悦達起亜汽車が、管理職の一時帰休を決めたことがわかった。

財新記者が5月8日に入手した社内通知によれば、同社は管理職を数グループに分け、6月1日から交代で一時帰休させる。第1陣の一時帰休期間は1年間に及ぶ予定だ。悦達起亜のある社員は、この通知が事実であることを財新記者に対して認めた。

この社員によれば、第1陣には130人余りが指名され、その多くが(社歴の長い)ベテラン社員だという。社内通知によれば、一時帰休期間中の賃金は最初の月に限ってこれまで通りの金額が支払われる。そして2カ月目からは、勤務地の地元政府が定める最低賃金のみが支払われ、福利厚生も利用できなくなる。

悦達起亜汽車の本社と工場は江蘇省塩城市にある。同市の最低賃金は1カ月2070元(約4万389円)に過ぎない。「実質的に自己都合退職を迫っているに等しいやり方だ。会社都合で解雇すれば(中国の労働契約法が定める)経済補償金の負担がかさむため、それを回避しようとしている」。前出の社員は不満を隠さない。

巻き返しはもはや困難か

同社はもともと、国有自動車大手の東風汽車、江蘇省の国有複合企業の悦達集団、キアの3社合弁で2002年に設立。2016年のピーク時には中国市場で65万台を販売した。

しかし、その後は中韓関係の悪化(によるブランドイメージ低下)やEV(電気自動車)シフトの遅れが響き、徐々に競争力を失った。2021年12月には、東風汽車が(将来に見切りをつけて)合弁事業から撤退した。

悦達起亜の2022年の販売台数は10万台に届かず、ピークの6分の1以下に落ち込んだ。悦達集団傘下の上場投資会社の決算報告書によれば、悦達起亜は2021年に45億8000万元(約894億円)の純損失を計上した。

本記事は「財新」の提供記事です

2023年4月に開催された上海国際モーターショーで、悦達起亜はEVシフトの加速を宣言。新型SUV「EV5」を11月に中国で発売すると発表した。EV5はキアが中国で生産する初のグローバル・モデルのEVだ。

とはいえ、中国のEV市場の競争は熾烈であり、すでに下位メーカーの淘汰が始まっている。韓国系メーカーがこれから巻き返すのは容易なことではない。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は5月9日

財新 Biz&Tech

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