アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラは5月初旬、中国市場で販売している4車種の値上げを発表した。具体的な値上げ額は、上海工場で現地生産している「モデル3」と「モデルY」が2000元(約3万8900円)。アメリカから輸入している「モデルS」と「モデルX」が1万9000元(約36万9500円)だ。
今回の予期せぬ値上げは、中国の業界関係者の驚きを誘った。と言うのも、テスラは2022年9月以降、中国で5回の値下げを実施しており、今後も値下げを続けるとの見方が主流だったからだ。
これまでの値下げの背景には、上海工場の生産能力に対する相対的な受注不足があった。テスラは2022年半ばに上海工場の増強を完了したが、中国市場での販売の伸びがそれに追いつかなかった。
同社はアメリカやヨーロッパでも生産能力を急拡大させており、工場の稼働率を維持するため、世界の主要市場で値下げを敢行。4月19日に発表した2023年1~3月期決算には、その効果が如実に表れた。同期のグローバル販売台数は42万3000台と、四半期ベースで過去最高を記録した。
しかし代償も大きかった。1~3月期のテスラの純利益は前年同期比24%減少。粗利益率は19.3%に低下し、アナリストの事前予想を大きく下回った。
上海工場の輸出拡大も一因か
テスラの中国事業も状況は同じだ。1〜3月期は販売台数が大きく伸びた反面、利益率が低下していた。そんななか不意を突いて発表された値上げについて、業界関係者の間では「値下げが所期の効果を達成したため」との見方が広がっている。
「リチウムなど車載電池の原材料価格が急落しており、多くの消費者が『テスラはさらに価格を下げる』という期待を抱いていた。今回の値上げは現地生産車に関してはわずかであり、消費者の大きな負担にはならない。真の狙いは、『これ以上の値下げはしない』というシグナルを送る(ことで消費者の買い控えを予防する)ことにあったのだろう」
財新記者の取材に応じたある業界関係者は、自身の解釈をそう語った。
そのほかにも、上海工場が余剰生産能力の新たな振り向け先を確保したことを、値上げの背景の1つと見る向きもある。上海工場は中国国内向けの生産と同時に、以前からヨーロッパ、日本、オーストラリアへの輸出を担ってきた。2023年からは、そこにタイ、マレーシア、カナダなどが加わった。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月6日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら