中国自動車首位「上海汽車」EVシフト出遅れの背景 VW・GMとの合弁会社のテコ入れが喫緊の課題に

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上海汽車集団は独自ブランドのEVも開発・販売している。写真は3月に発売した新型車「飛凡F7」(同社ウェブサイトより)

中国の国有自動車最大手の上海汽車集団は4月28日、2022年の通期決算および2023年1~3月期の四半期決算を発表した。2022年の通期売上高は7440億6000万元(約14兆5856億円)と前年比4.6%減少。一時的な損益を控除した調整後純利益は89億9000万元(約1762億円)にとどまり、同51.6%の大幅減益となった。

2023年1~3月期の業績はさらに厳しい。同四半期の売上高は1459億2000万元(約2兆8604億円)と前年同期比約2割減少。調整後純利益は21億6000万元(約423億円)と、前年同期の半分以下に落ち込んだ。

上海汽車集団の業績を長年支えてきたのは、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)との合弁会社である「上汽VW」と、アメリカのGM(ゼネラル・モーターズ)との合弁会社である「上汽GM」の2社だ。しかし近年、中国の自動車市場で急速なEV(電気自動車)シフトが進むなか、外資系の合弁メーカーは(EVの品揃えやスマート化などで)対応の遅れが目立つ。

それだけではない。上海汽車集団は独自ブランドのEVも開発・販売しているが、売れ行きは好調とは言いがたい。決算報告書によれば、2022年の新エネルギー車の販売台数は前年比46.5%増の107万3000台だった。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

1~3月期の販売台数27%減

これは市場全体の伸び率に大きく見劣りする。中国汽車工業協会のデータによれば、2022年の新エネルギー車の総販売台数は688万7000台と前年比93.4%増加した。

上海汽車集団にとっては、稼ぎ頭である上汽VWと上汽GMのテコ入れが喫緊の課題だ。

決算報告書によれば、上汽VWの2022年の販売台数は前年比6.35%増加したものの、グループ純利益に対する貢献額は前年の101億9000万元(約1998億円)から87億3000万元(約1711億円)に縮小。上汽GMは2022年の販売台数が前年比12.1%減少し、グループ純利益に対する貢献額は前年の72億6000万元(約1423億円)から55億8000万元(約1094億円)に縮小した。

本記事は「財新」の提供記事です

2023年に入ると、中国の自動車市場では(新エネルギー車を含めた)値下げ競争が激化し、エンジン車のシェア低下に拍車がかかっている。上海汽車集団が開示した速報値によれば、2023年1~3月期のグループ販売台数は前年同期比27%も減少。そのうち上汽VWの減少幅は31.7%、上汽GMは32.3%に上っている。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月29日

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