34年ぶりアマプラ復活「たけし城」違和感の正体 なぜAmazonがTBS伝説番組をリブートしたのか

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「待たせたなコノヤロー」と台詞を吐きながら第7話から登場するビートたけし(写真:Prime Video)

結局のところ、オリジナル版から引き続きメイン出演しているのは攻撃隊長を務めた谷隼人と、そしてシーズンファイナルの7、8話目にようやく登場する城主役のビートたけしの2人。

あえて比較すると、令和版のスタジオトーク部分はよくあるバラエティ番組にすぎず、より独自色があった昭和版を見返したくなった場合は、もれなくAmazonで視聴することもできます。

世界150カ国以上で放送実績

知名度の高い過去作を新たな装いで作り直すリブートは世界的なトレンドにもあり、34年の時を経てリブートされた今回の「風雲!たけし城」はそんな流れに乗っています。どれだけ世界的に知られているのかというと、「Takeshi's Castle」の英語番組名でこれまでアメリカやイギリスの英語圏をはじめ、アジアや南米など幅広い地域でも放送され、その数150カ国以上。2000年以降は現地のキャストと視聴者が出場する各国版も制作されています。

現地版制作が広がっていた2018年春に、昭和版のプロデューサー、元TBSの桂邦彦氏の元に、各国プロデューサーが視察のため来日したこともありました。筆者もその場に同席させてもらい「今の時代にも通用する笑いはどこにあると思うか?」と聞いたところ、中東のプロデューサーが「時代も国境も関係なく、誰でも失敗はする。それを思いっきり笑いに変えることに面白さがある」と即答で返ってきた言葉が印象的でした。この番組の本質はまさにそこにあります。

そもそもどんなコンセプトで始まった番組だったのかというと、TBSの公式ホームページにそれが記されています。昭和の時代を彷彿とさせながら「ビートたけしからの挑戦状」として書かれていますが、番組の原点がわかるものです。

「昔のガキは遊びの天才だったぜ。原っぱさえあれば、一日中遊んでいた。いま。原っぱなんかどこを見たってありゃしない。だからコンピューターゲームがのさばるんだ。でも勘違いするなよ。あんなもの遊びじゃない。遊びは汗をビッショリかいて、泥だらけになったり、すりむいたり、コブをつくったり、叱られたり、泣いたり、わめいたり、必死なものだ。昔、ガキだった奴も、今、ガキをやってるやつも思い切って泥だらけになってみろってんだ。それがこの番組だ、わかったか!ジャジャーン!」

ふざけているようで、明確な概念を持った番組であることが伝わってきます。当時は時代背景的に説明せずとも共有できる思いだったのかもしれません。だからこそ夢中になれる笑いも生まれたとも言え、時を経た今、その空気感を共有する難しさはあります。

令和版を視聴したAmazonのカスタムレビューをみると、純粋に楽しんだ声ももちろんあり、一方で良さと悪さを事細かに記したレビューも目立ちます。反応があるだけ、視聴者の思いが強い番組と捉えることができるのではないでしょうか。4月28日に全8話の配信が揃ったところで、今後、最大240カ国以上で順次、世界配信も予定されています。Amazonによる令和版が成功と言えるかどうかは、まだこれからです。多少スベっても笑いに変えていく粘り強さこそ「風雲!たけし城」の真価にあると思います。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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