「銀座・強盗事件」少年が無謀な犯行に及んだ背景 専門家「昨年から続く一連の事件と同じ構図」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

報酬を受け取る前提として、実行役たちは免許証など身分証明書を預けるよう強制されるほか、実家の住所など家族の個人情報も押さえられてしまう。そして、犯罪を実行するときに「やめたい」などとためらうものなら、こう脅されるのだ。「(犯行を)やらないのならお前を殺す。それだけじゃない。家族も皆殺しにする」。

「黒幕や指示役はアメとムチを巧みに使い分けています。実行役にリクルートされるのは、圧倒的に若い世代が多い」(松丸さん)

今回の事件では、16歳から19歳の少年たちが逮捕されているが、警察庁がまとめた刑法犯少年の令和3年度の年齢別の検挙人員では、16歳が3042人と最も多く、次いで17歳の2905人。そして18歳の2580人、19歳の2370人と続いている。

「シン・強盗事件」にどう対処するか

通行人も撮影かと勘違いしたほどの劇場型の犯行。こうした強盗の被害に遭った際に、被害を最小限に食い止めるにはどうしたらよいのか。松丸さんは店舗の側での対策を強化する必要があると強調する。

「被害に遭った店舗では犯行時に大音量の警報音が流れていましたので、一般的なセキュリティ対策は取られていたように思いますが、唯一足りなかったのが“外部へ視覚的に訴えるSOSサイン”です。具体的には、店の入り口の外壁などに赤色灯を設置し、被害に遭ったときに回転するようにしておくのです。そうすることで道行く人にも犯罪行為が行われていると一目で認識できるようになり、通報率も上がり、時間も格段に早くなります。何より撮影と勘違いすることもなくなるでしょう」

被害を最小限に食い止めるという意味でも、被害品や陳列ケースにも細工を施すことも有効だ。

襲われた高級腕時計店。被害を最小限にするには何が必要だったのか(写真:筆者撮影)

「例えば、バールの衝撃にもある程度耐えられる、強化ガラス製の陳列ケースにするのは基本中の基本ですし、細工としては、宝飾品などに犯人も気づかないような小さなGPSを仕込んでおくという方法もある。万が一GPSの存在に気付かれたとしても、犯行を迷わせるきっかけになります。GPSがあるから盗品を早く手放さなきゃいけないと考えることになり、犯人たちにとっては逮捕されるリスクが格段に上がるのです」

全国で相次ぐ、組織的な強盗事件。警察はどう対処していくべきなのか。

「実行役の少年たちへの捜査を糸口に黒幕にたどり着く突き上げ捜査を、総力を結集して行うのは当然ですが、何よりも実行役の調達ツールになっている、闇バイトへの監視を強化することです。監視社会になってはいけないと思いますが、必要があるときに“この闇バイトは誰が募っているか”がわかるようなシステムを作るべきです。それと、警察からの要請があれば、闇バイト告知を一旦削除できるとか、表示を止めさせることができるようになればいいでしょう」

犯行グループが連絡手段に用いている「テレグラム」や「シグナル」といった、やりとりが自動消去されるアプリも、警察当局ではほぼ復元できており、それを基に捜査を進めているという。警察当局では、こうした消去されたやりとりが強盗事件の指示役、黒幕にたどり着くとして徹底した分析・捜査を行っている。

東京の一等地、銀座で行った大胆で無謀な今回の少年たちの犯行。今この瞬間も、闇バイトにつられて実行役として息を潜めている人間がいるかもしれない。銀座の高級腕時計店の事件とはいえ、決して他人事ではない。

一木 悠造 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いちき ゆうぞう / Yuzo Ichiki

ノンフィクションの現場で取材・執筆を重ねてきたフリーライター。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事