子育て支援拡充しても「少子化」は解決しない根拠 「生涯無子率」から見る日本の本質的な問題点

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過去、未婚時代の理想や予想に対して、実態がどれだけだったかも確認することができます。それによれば、未婚時代に「選択的無子」だった割合に加えて、プラス8%程度の増加です(2021年時点で49歳の無子率27%、その対象者が34歳だった年は約15年前の予想割合が19%であることから)。つまりは、望まない「不本意無子」が8%程度発生するということです。

このままの割合が変わらず推移するとすれば、2021年の「選択的無子」の38%に、8%の「不本意無子」が加わり、最終的に女性の46%もの生涯無子率が2035年に到来することになります。

男性の場合は、それに約1割上乗せされるので56%が生涯無子です。女5割、男6割が子どもを持たずに生涯を終える時代がやってくるかもしれません。

不本意未婚や不本意無子には目を向ける必要がある

もちろん、結婚も出産も義務ではないし、他者から押し付けられるものでもなければ、国によって問答無用で強制されるべきものでもありません。

が、本心からの結婚を選択しない「選択的非婚」や子を欲しがらない「選択的無子」の人の意志は尊重するとしても、結婚したいのにできない「不本意未婚」が男女合わせて約4割強、子が欲しいのにできない「不本意無子」が約1割弱存在するという部分には、目を向けるべきでしょう。

また、「どうせ無理だから結婚も出産もしたくなかったことにしよう」という認知不協和による結果的非婚・無子の人たちもいることでしょう。

前回の記事(『所得が多いほど「出生数増」日本が直視すべき現実』)でも指摘したように、現代は所得が高くなければ結婚も出産もできない状況になっています。裏返せば、金や心に余裕のある人たちが結婚・出産をしているわけです。

子育て支援も大事ですが、それ以前に、結婚や出産に踏み切れない多くの若者の経済環境の改善や結婚や家族というものに対する希望が持てなければ、婚姻数はますます減少し、それは自動的に出生数の減少となるでしょう。

2023年の人口動態速報において、1~2月の出生数は前年比5%減にとどまっているのに対し、婚姻数は前年比21%減少です。このまま拙著(『結婚滅亡 ~「オワ婚時代」のしあわせのカタチ〜』)のタイトル通り「結婚滅亡」していくのを政府は見て見ぬフリをし続けるのでしょうか?

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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