日本は1990年代後半から2000年代初頭にかけて起きるはずだった第3次ベビーブームが来なかった時点で、未来の低出生は確定された未来となりました。「少子化ではなく少母化である」と言い続けているのはそういうことです。
少子化対策においていつも「見習え」と言われ続けているフランスでさえ「少母化」という言葉は使用していませんが、近年の自国の低出生の要因として、フランス人の出産・育児年代に当たる女性の人口減少を挙げており、今後出生数が上向くことはないと言われています。
まさに「見習う」べきは、そうしたファクトの認識であり、いつまでも(政治家にとって)不都合な真実から目を背けていられるものではありません。
日本の少子化の原因は「婚姻数の減少」
日本の少子化の原因をあえて単純化していうならば「婚姻数の減少」に尽きます。言い換えれば未婚率の上昇ということになります。
生涯未婚率(50歳時未婚率)という言葉は今では認知が広まっており、2020年の実績では男28.3%、女17.8%と過去最高になっていますが、だからといって子どもを産まない割合がそれとイコールというわけではありません。
生涯無子率という指標で考えてみましょう。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の出生動向基本調査では、妻の年齢45~49歳時点の子ども数0人の割合を継続的に調査しています。基本的に49歳までに子を産まなければその後も産むことはないとされています。いわば、この割合とは、既婚女性の生涯無子率といっていいでしょう。
それによれば、1997年に3.3%だったものが2021年では3倍増の9.9%に増えています。それだけ結婚しても子無しの夫婦の割合が増えているということになります。このすべてが「子どもはいらない」という「選択的無子」夫婦ではありません。子どもが欲しいのに授からないという「不本意無子」も増えています。
子どもが欲しいのに授からない夫婦に対して、不妊治療の経済的負担軽減や職場でのサポート体制の充実などは当然必要ですが、それ以上に、不妊の問題でもっとも重要なのは、男女とも生殖能力には年齢による限界があるということを忘れてはならないでしょう。生殖補助医療がどれだけ発達したとしても、加齢という問題によって子を得られない可能性が高いことは間違いないからです。
それでなくても、婚姻の初婚年齢は後ろ倒しになっています。ちなみに、女性で38歳以上の初婚割合を見ると、1997年は2%に過ぎなかったものが、2021年には9%に増えています。こうした初婚の遅れが無子夫婦の増加に影響がないとはいえないでしょう。
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