「100億ドル寄付」と「租税回避」の共存は正しいか 資本主義の問題点を拡大する「企業のWOKE化」

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「WOKE」本来の意味を都合よく解釈し、利益を得ようとする企業が浮き彫りになる(写真:LHG/PIXTA)
近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。たとえば、一般消費者向け企業が、気候変動、銃規制、人種平等などに参加する様子は「Woke Capitalism」と呼ばれる。このほど上梓された『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』で、著者のカール・ローズ教授は、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と問題点を描いている。
本稿では、本書を訳した庭田よう子氏が本書のポイントを紹介する。

「ウォーク」の変遷

「woke」(ウォーク)という言葉をご存じだろうか? 

WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす
『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

もともとはアフリカ系アメリカ人の間で、社会の動向・不公正などに対して「目覚めた」という意味で使われていた表現であり、やがて、人種・ジェンダー差別や不平等などに対して問題意識を持つという意味で、広く使われるようになった。

ところが、現在ウォークという言葉は、社会に対して高い意識を持つという意味よりも、「誤った、表面的な、ポリティカル・コレクトネス的な道徳性に影響を与える人々のこと」、価値観を押しつける意識高い系というネガティブな意味で使われるようになった。

たとえば、気候変動対策を訴えながらプライベートジェットで乗りつけるようなハリウッドのセレブたちは、ウォークだと槍玉にあげられている。

著者によると、1960年代にキング牧師が、公民権運動などによる社会変革に注意を怠らないように「目覚めたままでいる」(remaining awake)べきだと忠告し、アフリカ系アメリカ人の間にこの概念をもたらしたという。その後、ミュージシャンのエリカ・バドゥが2008年にリリースしたアルバムの中で、「わたしは目を開けたままでいる」(I stay woke)というフレーズを使い、再びこの用語を現代において活性化させた。

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