「100億ドル寄付」と「租税回避」の共存は正しいか 資本主義の問題点を拡大する「企業のWOKE化」

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2012年のトレイボン・マーティン射殺事件に端を発し、2014年のマイケル・ブラウン射殺事件などで拡大したブラック・ライヴズ・マター運動では、「#StayWoke」というハッシュタグも広く使われ、この運動において連帯を確認する方法となった。

「ステイ・ウォーク」(目覚めたままでいよう)という概念は、その後すぐにアメリカ文化の主流に取り込まれ、「アフリカ系アメリカ人に対する人種差別と警察の暴力に限定されるのではなく、社会の不公正全般に対する意識という意味にまで及んだ」。ウォークという言葉は広く使われるようになり、「人種的・社会的差別や不公正に対して高い意識を持つ」ことを指す言葉として認識されるようになった。

ダブルスタンダードのセレブと企業

ところが、2010年代半ば以降になると、ウォークという言葉は、政治以外の事柄にも適用されるようになった。ウォークが持つ道徳的イメージから利益を得ようとする企業やセレブが、その意味を変容させるきっかけをもたらした。「大規模な人種間の不公平に対峙する際の連帯を通じて自己認識を政治的に要求することから、自己正当化のためのアイデンティティの目印へと、ウォークは本質的に変化した」のだ。

やがて、進歩的な政治や大義、それを標榜する人たちを揶揄するために、ウォークという言葉が使われるようになり、本来の意味が歪められてしまった。

ダブルスタンダードのセレブたちはウォークだと批判され、保守派はリベラル派をウォークだと批判する。ウォークを隠れ蓑にする企業は、そのブランドや市場価値を向上させておきながら、結局はその大義を利用しているにすぎない、企業とそのCEOたちのウォーク化は資本主義に死をもたらす、という批判もある。だが、ことはそれだけにとどまらないと著者は指摘する。著者は、ウォーク資本主義が民主主義の未来に脅威を与えると懸念を抱き、警告を発しているのだ。

ウォーク資本主義とは、「昨今急増する、社会運動と連携しながらその連携を広く宣伝や広告に利用している企業、とりわけそうした多国籍企業を言い表す言葉」だという。「そうした企業が支持する政治的大義には、婚姻の平等、ドメスティック・バイオレンスへの取り組み、セクハラ対策、人種差別との闘い、LGBTQI+の人々の権利確保、障害のある人々の平等促進、精神疾患に対する意識啓発、そしてもちろん気候変動対策が含まれる」。

たとえば、剃刀メーカーのジレットは、「男らしさ」を全面に出す従来の方針を転換して、広告で「有害な男らしさ」の問題に取り組んだ。ティファニーはオーストラリアの森林火災発生時に、気候変動対策をとるように求める新聞広告を載せた。ナイキは、人種差別に抗議し事実上NFLを追放されたコリン・キャパニック選手を広告に起用した。

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