旅情をそそる「最南端」、鹿児島ご当地鉄道事情 昔はブルートレイン、いまは新幹線の終着地

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指宿枕崎線は、全線を通して乗ると3時間近くかかるという長大なローカル線だ。末端の(つまり西大山駅のある)山川―枕崎間に至っては1日6往復しか走っていない。西大山駅とて、駅前に観光バスが停まっていて、何かのツアーの観光客でにぎわっていたりする。

1日6往復では列車で到達するのが難しいというのはわかるけれど、まあ、なんとも微妙な気持ちにさせられる。日中の普通列車は、ほんの数分だけ西大山駅で停車してくれるサービスがあるのはありがたい限りだ。駅前には、幸せの黄色いポストが立っている。

西大山駅と開聞岳
“JR日本最南端”の西大山駅。ホームからは開聞岳を望める(撮影:鼠入昌史)

そんなザ・ローカル線の指宿枕崎線だが、起点方は沿線にベッドタウンが広がっていて、さらに大学や高校などがあるのでお客が多い。朝の通勤時間帯、鹿児島中央方面の上り列車に乗る通勤客はかなり多いし、下り列車も通学の学生で混雑していたりする。まるで都市部の通勤路線そのものだ。

それが徐々に減っていって、確実にお客がいるのは温泉地の指宿あたりまで。そこから先が、徹底的なローカル線になるという、段階的な変化を見せる路線なのだ。観光特急「指宿のたまて箱」が走るのは、鹿児島中央―指宿間である。

消えた路線の夢の跡

鹿児島県内だけで完結する路線は、鹿児島市内の路面電車を除けば指宿枕崎線だけだ。宮崎県の南宮崎駅から延びる日南線は鹿児島県内に2駅のみで、志布志市志布志町志布志にある志布志駅を終点とする。

かつては薩摩半島側に宮之城線や山野線、大隅半島には志布志線や大隅線といったローカル線があった。ただ、国鉄末期にいずれも廃止されて姿を消した。

「指宿のたまて箱」
「指宿のたまて箱」は浦島伝説にちなんだ指宿枕崎線の観光列車(撮影:鼠入昌史)

沖縄を除いて“鉄道がないのに人口がいちばん多い市町村”である鹿屋市は、大隅線が通っていた大隅半島の中核都市である。また、薩摩半島には枕崎で指宿枕崎線と結び、ぐるりと半島を回る鹿児島交通の路線もあった。

こうした廃線を数えれば、現役路線以上のネットワークがあったといっていい。だからむしろ鹿児島の鉄道の本領は、いまはなき廃線たちにあるのかもしれない。

鹿児島の鉄道の旅をするならば、現役路線を巡るのもいい。が、消えた路線の跡も、そこかしこに明確に残っている。それをたどってみるのもまた、おもしろい最南端の旅である。

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鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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