東大総長賞の4人はなぜ「突き抜けた」か? 昨年度の受賞者の素顔
飲み会では、みんなが時間を忘れて「自分のダブルダッチ論」を熱く語り合う。年2回の世界大会や、その予選となる国内大会で上位入賞した先輩チームもあった。
「サッカーで世界一はキツイけど、大半の人が大学から始めるダブルダッチなら、頑張れば結果を出せる」
連日柔道場に通いつめ
始めた当初は、学園祭専門の「お祭りチーム」として活動し、自身も「すごくストイックにやるという感じではなかった」と語るが、しだいに熱が入るようになった。週2、3回の全体練習以外にも、メンバーは各自ダンス教室や体操教室に通うなどして技を磨いた。藤本さんも連日、講義の合間に連日柔道場に通いつめ、バック転やバック宙の練習を繰り返した。
卒業が迫る2013年12月には、リーダーになっていた藤本さんが「大会に出てみないか」と仲間に声を掛けた。大学院への進学を控え、卒業研究で大忙しだったが、同期生のチームが別の世界大会で入賞したことに刺激を受けていた。
「楽しいからやってきた。将来、これで飯を食っていくわけじゃない。だからこそ、本気で取り組める今この時にこそ、楽しさを究めなくてはと」
そこからはあっという間だった。技術不足は知恵で補えばいい。話し合いを重ね、本来は回して跳ぶ縄を「首にかけたら金メダルっぽく見えるんじゃね?」といった脱線気味のアイデアも出し合った。プログラミングが得意なメンバーが「人の動きの最適化シミュレーション」を組み、その結果も採り入れた。こうして短時間でパフォーマンスを練り上げ、大会初出場でビッグタイトルを射止めた。
「練習時間も取れない、技術も足りない。だからこそ、『自分たちは何を持っているのか』に極限までフォーカスできたんだと思います」
「完全燃焼できた」と感じた藤本さんはサークルを引退し、今は銀河の進化の過程を探る研究に没頭している。
幼いころ、UFOや異星人をテーマにしたテレビ番組を見て宇宙に興味を持った藤本さん。
「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。『宇宙の始まりと進化』を研究したい」と、宇宙物理学で世界屈指の研究レベルを誇る東大を進学先に選び、1浪して理科一類に合格した。
今度は、研究者として「世界」に挑む今、ないないづくしの逆境を逆手にとって仲間と頂点を極めた経験はきっと生きると信じている。