保険料は死亡率や事故率を用いて確率論から計算されます。ところが確率は、いくら精緻なものであっても、あくまで将来予想です。予想は外れることもあります。そこで日本の保険会社は、さらに安全を見込んで、保険料を高めに決めています。
米国の保険会社は、厳しい保険料の価格競争にさらされていますので、日本ほど安全率を上乗せすることができません。こうして元値の決め方でも、日米の保険料格差の違いが出るのです。
「割り勘」か「個別払い」か?
最後が、日米のプーリング方式の違いです。プーリングとは保険リスク(たとえば、健康と不健康)の度合いに応じて、保険集団(健康なグループと不健康なグループ)を分ける考え方です。少し難しそうですが、友達と居酒屋で飲んだあとの支払い方と同じです。支払額をみなで均等割りするのが「割り勘」です。それでは納得できない、あいつはオレの倍以上飲んでいる、だから勘定は別々にしよう。それが「個別払い」です。
日本の生命保険料は、主に「割り勘」方式で決められています。みんなで公平に同じ金額を負担する(保険料を払う)方式がメインです。それに対して、米国は「個別払い」方式を多く取り入れています。多く飲んだ人(不健康な人)は、その分多く払います。飲まなかった人(健康な人)は、多く飲んだ人の分を負担しませんから、安くなります。
日米の保険料の違いはこの方式の違いにも表れてきます。私が米国で生命保険に入ったときは、日本の保険料の3分の1でした。健康度が5段階の上から2番目だったからです。
プーリング方式は良し悪しの問題ではなく、参加者(保険加入者)の納得感の問題です。米国では、各人のリスクに応じて保険料を決めるのが、合理的と考えます。一方日本では、多少の損得があっても、保険料を同じにするのが保険本来のあり方だと考えます。どちらも一理あり、あとは加入者がどう納得するかということになります。
ただ消費者にとって、選択肢の多いほうが満足度も高いとするなら、日本の生保会社は、プーリングをもっと弾力的に取り入れるべきだと思います。現に、自動車保険ではリスク細分型保険として、いろいろなタイプの保険が登場し始めています。あまり運転しないドライバーは、その分、安い自動車保険を選べます。日本もようやく、さまざまな自動車保険を「選択」できる時代になってきました。
保険の手数料は、保険会社の経営努力により、今後、ますます引き下げられていくでしょう。すでにその動きは出始めています。しかし、まだまだ欧米並みの水準にはなっていません。保険の元値は、金融行政の考え方の問題もからみ、相変わらず高止まりの状況が続いています。プーリング方式は、いっそうの弾力化が求められます。リスク細分型の自動車保険が開発されて、日本のドライバーたちの保険への満足度は上がりました。この流れをますます広げていくべきでしょう。
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