アップルが「高金利の預金サービス」始めた裏事情 iPhoneユーザーは「より信用に値する」のか?

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別の金融機関の当座預金口座であるApple Cashから資金を移行させるよう案内がされる(画像:アップル)

アメリカの銀行口座は、当座預金口座と貯蓄口座がセットで開設されることが多いため、Apple Cashの枠の中に新たにApple Card Savingsが案内されるのは不自然ではない。クレジットカードと貯蓄口座を1つの画面で管理するのは不思議な感じもするが、ゴールドマン・サックスの事情を知ると納得がいく。

ゴールドマン・サックスは、Apple Cardを含むプラットフォーム・ソリューション事業で、2022年度の9カ月間に12億ドル(約1603億8500万円)の損失を出していることを明らかにした。損失は圧縮されつつあるが、その速度を高めるべく、高金利を払っても、ゴールドマン・サックス内に資金が留まる仕組みを作りたかった、という思惑があったのではないだろうか。

アップル経済圏で醸成する「新しい信用」

一方、アメリカ市場で急速に金融サービスを充実しているアップルには、どんな狙いがあるのだろうか。

一般的に、信用情報は、クレジットカードの使用履歴や借入の返済といった、その人のお金にまつわる「過去の振る舞い」をもとに作り出している。簡単に言えば、お金をちゃんと返す人には、より大きな金額が貸し出され、その利息も低くなる。逆にお金を返さない可能性が高い人は、少ない金額しか借りられなかったり、利息が高く設定されたりする。

多くのアメリカ人は大学時代にクレジットカードを持ち、履歴情報を蓄積していくが、カード破産が社会問題となり、2010年からは、大学のキャンパスでのクレジットカードの勧誘が大幅に制限されるようになり、各大学でも勧誘を禁止する動きが拡がった。

つまり、信用情報を持たない世代が大きく拡がりつつあり、アップルがゴールドマン・サックスとともに、iPhoneを入り口とするクレジットカードのサービスに取り組んだ理由も、そうした金融と信用にまつわる環境の変化に対応する施策だったと捉えることができる。

Apple Cardは、多くの人にクレジットカードを発行し、iPhoneの上で簡単にクレジット残高や返済金額などをコントロールできるユーザー体験を提供した。しかし既存の尺度では、これは大きなリスクを取っていることになる。

しかし、アップルとゴールドマン・サックスは、もう少し長い目で、この事業を続けていくようだ。その理由として考えられるのは、新たな信用データの創造だ。

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