アップルが「高金利の預金サービス」始めた裏事情 iPhoneユーザーは「より信用に値する」のか?
通常、クレジットカードを作るために審査があることは、日本やアメリカでも共通だ。ただ、Apple Cardはどんなに信用情報が低い人、あるいは信用情報をまだ持っていない若者であっても、750ドル(約10万円)という枠は小さくてもクレジットカードを作ることができる点で、これまでのサービスとは一線を画すものだった。
このApple Cardと同じ体験で、貯蓄口座を作ることができ、かつ4.15%という高金利のサービスを手軽に享受できるということで、消費者にとっては非常に魅力的な選択肢となる。
「金融サービスの捻れ」を解消する狙い
今回のApple Card Savingsを読み解くうえで、一つ留意しておくべきことがある。それは、Apple Cardのサービスに組み込まれている2〜3%のキャッシュバック特典「Daily Cash」が関係している。
Apple Cardを使うと、買い物の金額の2〜3%がキャッシュバックされる。このキャッシュバックされる金額が貯まっていくのは、iPhone同士でメッセージアプリを通じて手軽に送金したり、店頭でApple Payとして支払いができる「Apple Cash」の口座だ。
ちょうどこの口座は、アメリカの銀行口座でいえばチェッキングアカウント(当座預金口座)で、利息は付かないが手数料なく入出金や引き落としができるサービスだ。システムの背後にはグリーンドットバンクというフィンテック企業がある。グリーンドットは世界最大のプリペイドデビットカード企業で、Apple Cashのほかにも、ウーバーやウォルマートなどのプリペイドサービスで、金融バックエンドを担っている。
一方Apple Cardはゴールドマン・サックスがサービスを提供している。ここで問題になるのが、ゴールドマン・サックスからグリーンドットへの資金の流出だ。クレジットカードの取扱額が増えれば増えるほど、Daily Cashとしてキャッシュバックする金額が、ゴールドマン・サックスからほかの金融機関に流れていく構造が作り出されているのだ。
今回のApple Card Savingsは、セービングスアカウント(貯蓄口座)の扱いであり、口座はゴールドマン・サックスに開設される。Apple Cardで獲得したキャッシュバックを、グリーンドットの口座ではなく、ゴールドマン・サックス内に留める仕掛けを用意した格好となる。
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