「しまむら」意外と"値引き少ない"儲けのカラクリ 2期連続最高益更新「決算書の裏側」を読み解く
同様に、ユニクロは筆者の推定で25%、SPA型のファッション専門店は30%~35%の当初販売価格からの値引きをしていると推定される。
しまむらは、ユニクロの半分、ファッションSPAの1/3程度の値下げに抑えているわけだ。
もともと低い粗利率しか得られないビジネスモデルにおいて、たくさんの値引きをしてしまっては利益が出ない。しまむらには、薄利多売ビジネスにおいて、値下げを抑えて売り切る仕組みがあるのである。
同社はどのようにして、値下げを抑えているのか?
その仕組みの1つ目は、もともと、値下げを想定しない、最初から値段が安く、顧客にとって「適正価格で販売する価格設定」が挙げられる。
「在庫コントローラー」というスペシャリストの存在
そして、もうひとつは、バイヤーが仕入れた商品をできるだけ、定価で売り切るために、仕入れ活動に特化するバイヤーとタッグを組んで、店ごとの売れ行きの違いと在庫の偏在を、データを見ながら調整する「在庫コントローラー」というスペシャリストの存在だ。
どんな商品も店ごとに売れ行きにばらつきがあるものだ。どんな良い商品も、そこで起こった欠品と売れ残りを放置してしまえば、値下げや売れ残りになってしまうものだ。それを、チャンスを逃さず、タイムリーな店間移動による在庫調整をかけて、売り切っていくのが、在庫コントローラーの役目である。
同社では、在庫コントローラーが在庫調整をしやすいように、システムを自社開発し、商品ごとの販売期限を決めて、それまでに売り切れないものは、自社の物流網で売れる店に店間移動しながら売り切っていく。それでも売れないものは潔く徹底値下げをするポリシーだ。
ほぼ毎日、新しい商品が入荷するが、過剰在庫にならないように、なおかつできるだけ値下げをしないで売り切って行く、このスペシャリストたちの努力の結果が、同社の値下率に反映される。
どんな業界でも原価が高騰している昨今。そのまま売値に転嫁して値上げをすれば、顧客は買い控えることだろう。これに対して、適正価格をつけ、できるだけ値引きを抑えれば、原価上昇分もある程度は吸収できるのではないか?
当初販売価格に対して、多くのアパレル小売業が25%~35%もの値下げをしているところに、大きな利益の原資があることは既出の通りである。
どんな会社も値下げを最小化する在庫コントロールは必須スキルである。原価高騰の折、値下げ率または、値引き率をコントロールすべきKPIのひとつとして、モニターしながら、ビジネスモデルを磨いていく。しまむらとビジネスモデルは違っても、同社の決算書から学ぶことはありそうだ。
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