「しまむら」意外と"値引き少ない"儲けのカラクリ 2期連続最高益更新「決算書の裏側」を読み解く

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実は、コロナ禍前から、国内の婦人服マーケットは低迷しており、多くのアパレル専門店においては、服以外のライフスタイル関連商品で補わなければならない状況が続いている。

この3年間、筆者もしまむらの複数の店舗に何度か足を運ぶ機会があったが、それまで脇役だった、インテリアや子ども服など、婦人服・肌着以外のカテゴリーの売り場げが広がっていることに気づいたものだった。

今後、しまむらのリボーンと成長のカギを握るのは、婦人服だけに頼らない、需要に応じた柔軟な部門構成の売り場伸縮なのかもしれない。アパレル店は服だけを売っていても成り立たない時代なのだ。

低粗利率でも高利益率を稼ぐしまむら

続いて、しまむらの収益性の特徴を見てみよう。図はしまむらとユニクロ、一般的なアパレルSPA(製造小売業)のPL(損益計算書)を図式化したものだ。

しまむらは売上高に対して、粗利率は34.0%。これに対して、販売管理費は25.5%で8.7%の営業利益率を稼ぐ(2023年2月期)。

ちなみに、ユニクロのファーストリテイリングの粗利率は52%、販売管理費率は39%で、営業利益率は約13%(2022年8月期)、また、一般的なアパレルSPA(アダストリアやパルのようなファッション系SPA)の専門店の粗利率はおおよそ50~55%の水準で、45%前後の販売管理費で5~10%の営業利益を稼ぐ収益構造である。

しまむらは、業界の中でも、低粗利率をローコストオペレーションで支え8%台の営業利益率を稼ぐビジネスモデル。これは、アパレル小売業にとって、粗利率が高いほど儲かるという話ではなく、その販売方法が消費者から支持されながら、継続的に営業利益をしっかり稼げれば、いずれも正解であり、「ビジネスモデルの違い」である。

しまむらの主戦場は、日本全国の地方小商圏、かつては「主婦の店 しまむら」として知られていた。顧客の自宅から近い、主にロードサイド立地において、豊富なファッション、ライフスタイルの品揃えを、地域の多くの人が気軽に買うことのできる低価格で販売するチェーンストアである。

そんな商売においては、顧客が望む価格帯は決まっている。一方、メーカーからの仕入れが中心のため、仕入れ原価を自らコントロールしづらい。そのため、仕入原価率は高くなり、低粗利率で販売するために、セルフ販売をベースにしたローコストオペレーションで運営する、というのがしまむらのビジネスモデルである。

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