底抜けに明るい「102歳ばぁば」の爽快な人生哲学 83歳で夫を見送り約20年、毎日を楽しむ習慣
元・小学校教師、身体も頭も使い続ける毎日
哲代さんの寝室の枕元には亡き夫の写真が鎮座する。毎晩、寝る前に「おやすみなさい」と声をかけるためだ。
「若いころは子どもを授からなかったことに、私もえっと(たくさん)悩んだり、落ち込んだりしてきました。陰口を言われたくないという思いが強かったから、ちいと尖っとりました。負けん気っていうんかな(笑)。勤め先の学校からも一目散に帰って、すぐ畑に出るんです」
子だくさんが当たり前の時代。農村の旧家では、肩身が狭い思いもしただろう。
「教員の仕事という“自分の生きる場所”があったから、家でも頑張れたんかもしれません。それでも肩肘張って、切ない思いをして行き着いたのが今の私。『丸ごと好きよ』と認めてあげたいです」
気張らず飾らず、あるがままを受け入れた哲代さんだが、夫亡き今、先祖代々の家と畑の後継者はいない。できる限り石井家を守ることが、哲代さんにとっての「人生の宿題」となっている。
「102歳のひとり暮らしは、はたから見たら、冒険のように映るかもしれん。私も本当に独りぼっちだったら落ち込んでしまうと思う。じゃけど、みんなが支えてくれるから安心しとれるんです」
とはいえ、先々のことを考えると時に心細さも見え隠れする。それでも「私はこの家の主ですけえ」と自分にハッパをかけ続ける。
「“心はお月さんのようなもん”です。私のは三日月のようにちいと欠けとる。弱いところを見せて、いろんな人に助けてもろうて、満月にしていこうと思います。これからはひとりで背負ってきた重い荷物を、ひとつずつ下ろしていけたらええなあと」
生きていればさまざまな悩みに直面するが、嘆くことにエネルギーを使えば、心も身体も弱ってしまう。
そんなときは自ら用事をつくって身体を動かす。また、ストレスを感じたら、日記に書いて発散させているそう。