底抜けに明るい「102歳ばぁば」の爽快な人生哲学 83歳で夫を見送り約20年、毎日を楽しむ習慣

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80歳を過ぎたころから、考えても仕方のないものがあることを理解して、物事を受け流すのがうまくなったと語る。

降参するのが早くなったんでございます。悪口を言われても、この人は気の毒な人じゃなと思うし、自慢話ばかりする人も容認してあげるん。『うらやましい』の心にふたをして、人を褒めるんです。人は人、自分は自分。元気で生きとるだけで上等と思えるようになりました

哲代さんは、煩悩やねたみなど、心がしんどくなることは早めに手放す。反対に、うれしいことや楽しいことを存分に味わうようにしている。

「生きとる間は楽しまんと損。『ああ、おなかすいた』とか、『ああ、ご飯がおいしい』とか、ひとつひとつ、大げさに声に出してその瞬間を喜びます」

老いを自然体で受け入れながら、それでも前に進もうとする姿は、“完璧なおばあちゃん”ではなく、私たちの等身大のお手本だといえる。

担当記者が語る!「哲代さんのすごさ」

哲代さんの取材を続ける、中国新聞の木ノ元陽子さん、鈴中直美さんにいつもの様子を聞いてみた。

オンラインイベントに参加した石井哲代さん(写真提供/中国新聞社)

哲代さんは頭の回転が速く、質問に対して想像を超えるような答えが返ってきます。好奇心が旺盛で観察力も鋭い。

例えば、私たちが重い荷物を持っていると、すかさず「それ、下ろしなさい」と言い、荷物をつかみます。誰に対しても、こまやかな気配りができる方です。

また、いつ訪ねても「入りんさい、入りんさい」と大歓迎。ただ、自分をよく見せようとしないので、家の中が散らかっていても気にする様子はありません(笑)。小さなことにとらわれないのは、百寿者ゆえのおおらかさなのではと思っています。

その一方で「1日でも長く家を守り、自分の役割を果たしたい」という気迫に満ちた覚悟も伝わってきます。周囲は、そんな哲代さんの意思を尊重し、姪御さんとご近所が連携して“チーム哲代”として、手伝いすぎないように絶妙な距離感でサポートしています。私たちも哲代さんの生き方を応援していきたいと考えています。

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』(文藝春秋)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
石井哲代さん
1920年広島県生まれ、尾道市在住。元・小学校教師。56歳で退職後は畑仕事を行う。2003年に夫を亡くしてからはひとり暮らしを続ける。100歳を超えても元気な姿が中国新聞やテレビなどで紹介されて話題に。共著に『102歳、一人暮らし。』(文藝春秋)。

<取材・文/松澤ゆかり>

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