中国で「稼げなくなった」化粧品メーカーの大誤算 定番商品が売れず、新規制で技術流出リスクも
多くの化粧品メーカーがインフルエンサーに頼ってきたが、大量のフォロワーを持つ人ほど、影響力を武器に大幅な値下げや高額な手数料をメーカーに要求するようになった。「過度な値引きで採算が悪化し、定価ではほとんど売れないブランドが多い」(化粧品メーカー幹部)。
さらに「高い目標を掲げて拡販を優先した結果、転売の安売り品が出回ってブランド価値が低下してしまった」(資生堂関係者)と悪循環に陥っている。前出の徐代表は「根本的な問題は、中国人消費者の理解が十分にできていないこと。インフルエンサーや芸能人に拡販を一任したままでは、値引きを要求され続けジリ貧になるだけだ」と警鐘を鳴らす。
そして3つ目が、中国政府による化粧品の成分開示義務の強化だ。
2021年1月に「化粧品監督管理条例」が施行され、ルールが厳格化された。順守しなければ2023年5月1日以降、中国向けの一般貿易による販売を一切禁止するという内容だ。しかしメーカーの対応が難航して業界団体などが働きかけたことで、2023年12月末まで延長されている。
2024年1月からは全製品を対象に、化粧品成分を0.1%単位で含有量の多い順にラベル表示することが義務づけられる。中国に存在しない独自成分の場合、新しく登録する必要もある。
高まる技術流出と模倣品リスク
現地メーカーが成長する中で粗悪品が出回り始めたため、消費者保護が規制強化の目的とされている。しかし日本の化粧品メーカーにとっては、コスト増と技術流出が懸念される。
多くの中小化粧品メーカーは、商品のブランディングやコンセプトづくりを手がけ、成分配合や製造はOEMに委託している。製造技術を持つOEMにとって、化粧品レシピは生命線だ。「詳細な情報を要求されるため、技術流出で模倣品が増えるリスクがある」(OEM幹部)と警戒する。
一方で中小化粧品メーカー幹部は「レシピ情報などが流失した場合に備えて、罰金を払う契約をOEMと結ぶ必要が出てきた」と困惑する。手続きも煩雑で「多くの原料メーカーから使用承諾を得られず、別の調達先を探すのに手間取っている」と語る。
さらに「美白」や「アンチエイジング」などの宣伝文句を使用するには、中国調査機関に中国人の肌への効能を判断してもらう必要がある。研究開発に力を入れて、独自技術を武器にしてきた日本の大手メーカーにとっても逆風だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら