中国で「稼げなくなった」化粧品メーカーの大誤算 定番商品が売れず、新規制で技術流出リスクも

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「2022年の中国向け一般貿易の登録は、前年比30%以上も落ちている」と日本企業のマーケティング支援などを行うNOVARCAの中澤吉尋・中国法人代表は語る。そして「一般貿易ではない越境ECを選んでも、競争が厳しく新規参入で成功する可能性は高くない」と指摘する。

「日本勢は欧米と比べて申請が遅れている」(複数の業界関係者)。販売可能な新製品の減少は、中長期的な中国市場での日本勢のプレゼンス低下にも関わってくる。

中国の規制強化について資生堂の魚谷雅彦CEOは「法令を遵守し対応する」とのスタンスだ。同社の売上高20%超を占める中国市場は、第二の柱と言えるほど傾倒している。資生堂の2022年度の中国事業コア営業利益(構造改革費用など一時的要因を除く)は39億円の赤字だった。都市封鎖などコロナ影響が要因としながらも、今後は「大セールへの依存度を下げる」(藤原憲太郎社長)。

中国に成長託す切実な事情

資生堂に限らず、日本の大手化粧品メーカーにとって中国進出は欠かせない。最大の魅力は市場規模と成長性だ。ヘアケアなども含む日本国内の化粧品市場は、2021年は4.3兆円と10年間から3%減と頭打ちだ。対して中国市場は2021年は11.5兆円と10年前から2.5倍へ成長している。最大市場であるアメリカの13.4兆円に僅差で迫る勢いだ(ユーロモニター調べ)。

さらに中国ではスキンケアの需要が高い。同じアジア圏の肌質という親和性もあり、日本メーカーの得意分野が受け入れられやすい。経済発展とともに富裕層の拡大も続き、高価格帯商品の伸びが期待される。

欧米市場ではフレグランスやメイクの需要が高く、「成熟市場のため新規ブランドを浸透させることが難しい」(複数の業界関係者)。資生堂、コーセー、花王などの日本メーカーが成長を目指す上で、中国市場は避けて通れない。

ある資生堂OBは「今後は割り切って、メイドインジャパンの価値やブランド力を重視した経営をすべきだ」と指摘する。成分開示義務で商品の差別化が難しくなるならば、欧米メーカーが得意とするブランドマーケティングにも力を入れる必要があるだろう。

消費者ニーズの変化や新規制で、日本メーカーが得意としてきた品質訴求の定番商品だけでは厳しくなっている。現地新興メーカーの存在感が急速に高まる中、新たな戦い方が求められている。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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