定年夫婦が互いに「イライラ」してしまう根本原因 昼間の大半の時間を過ごす場所を互いに確保

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妻のほうは、夫が帰ってくる時間を逆算して、料理を仕上げる時間を決められる。それにね、なんといっても、女性脳のキーワードは時間。「3時にコーヒー」「7時に夫の帰宅」、そんなふうに決まったら、それまでの時間を、なんとなくそれを楽しみに過ごすことになるのである。

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いきなり帰ってきて、お土産をもらっても悪くないけど、「今、小田原通過中。きみの好きな○○、買ったよ」なんてメールをもらったら、2時間くらい、楽しい気分でいられるわけ。そして、2時間分の情緒が、すべて夫への愛着ポイントとなって、積み立てられるわけ。

毎日のコーヒータイムだって、そうなのだ。今日は、庭の草花を摘んでテーブルに飾ろうかな。バナナケーキ焼こうかしら。そんなふうに一人で勝手に「コーヒーまでの時間」を楽しんでおいて、その情緒を、全部、夫への愛着ポイントに変えてくれる。それって、かなりお得な話でしょう?

夫婦には、習慣が不可欠である。特に、子育てを終えてしまって、「家族の習慣」が消えてしまった二人には。

この世は本当によくできている

話を戻そう。夫婦は、バリエーション豊かな遺伝子配合のために、感性真逆の相手に惚れる。そして、感性の違いは、さらに、子どもと二人の生存可能性を上げているのである。「とっさの行動」が真逆になることで、お互いを守り合うことができるからだ。

たとえば、「ふと不安になって、周囲を確認する」とき、「空間全体を眺めて、動くものに瞬時に照準を合わせる人」と「身の回りを綿密に感じ取って、針の先ほどの変化も見逃さない人」がいる。感性が違う二人がペアになれば、死角のない鉄壁のペアになれるってことだ。大切なわが子に外敵が近づけば、夫(妻)がいち早く気づいて迎撃し、妻(夫)は、混乱の中でも、子どもから一瞬たりとも意識を離さず守り抜くことになる。

感性真逆の相手に惚れる仕掛けは、二重の意味で、よりよい生殖のための基本プログラムなのである。

黒川 伊保子 人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家

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くろかわ いほこ / Ihoko Kurokawa

1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピューターを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)、『夫婦脳』(新潮文庫)など多数。

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