定年夫婦が互いに「イライラ」してしまう根本原因 昼間の大半の時間を過ごす場所を互いに確保

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そもそも夫婦は、一緒にいるのに適さない二人なのである。雌雄で生殖する動物はすべからく、生殖の際に感性真逆の相手を選ぶことになっている。人間で言えば、HLA遺伝子(免疫抗体の型をつくり出す遺伝子)が遠く離れて一致しない相手を選ぶ。免疫抗体の型は、細胞レベルの「外界刺激に対する反応」を決するものである。これが違うわけだから、たとえば、かかりやすい病気が違ってくる。逆に言えば、生体としての強さのタイプが違ってくるわけだ。癌になりにくい、細菌に強い、ウィルスに強い……。

そう、「生殖」とは、「違うタイプの遺伝子を掛け合わせ、子孫に、よりバリエーション豊かな遺伝子を残して行く行為」なのである。だってほら、寒さに強い遺伝子と、暑さに強い遺伝子を残しておけば、地球が温暖化しても寒冷化しても、子孫の誰かが生き残ることになって、絶滅を防げるでしょう? 地球上の生態系は、本当によくできている。

そして、「発情」とは、「いっそかけ離れた遺伝子の持ち主を見つけ出したときの脳の反応」なのである。

惚れ合って一緒になった夫婦は、生体反応が異なる相手。当然、夫婦の快適な室温が一致するわけがない。おそらく、暮らしの中のちょっとした反応も違ってくる。寝つきがいい/寝つきが悪い、油ものが好き/油ものが苦手、せっかち/おっとり、几帳面/大雑把などなどだ。

おっとりした人が、せっかちな人の行動を目にしたら、イライラする。もちろん、逆もそう。というわけで、夫婦の生活空間は、分けたほうが無難なのである。

夫婦の愛着を培う「暮らしの気配」

昼間の大半の時間を過ごす場所を、互いに確保しよう。互いのしていることが目に入らない場所。ただし、互いの動く気配がわかる場所。トイレに行ったり、水を飲んだり、料理したり掃除したりする音くらいは聞こえてほしい。

なぜなら、音がすれば、脳は無意識に「一緒にいる感じ」を味わっているので、相手への愛着のようなものが湧いてくるから。熟年夫婦の間で、愛着を培うのは、とてもとても大事なことだ。もっと先、二人が寄り添って、〝二人で一人前〞となって生きる日のために。音が聞こえると、相手への理解にもつながる。

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