長期化するリビア内戦、殉教を選ぶカダフィ大佐

カダフィ政権側の大規模な軍事的反撃で反政権側が追い詰められていたリビアの戦況は一晩で変わった。3月19日に米国、英国、フランスを中心にした多国籍軍が、カダフィ政権側の軍事施設を攻撃する「オデッセイの夜明け作戦」を開始したからだ。この作戦には、アラブ連盟に加盟するアラブ首長国連邦(UAE)やカタールも航空機を派遣、後方支援部隊として参加した。多国籍軍の空爆や巡航ミサイルによる攻撃は、カダフィ政権側の軍事力に大きな打撃を与えた。空軍基地やレーダー管制機能は破壊された。

軍事介入で救われた反政権側

多国籍軍の軍事行動は、3月17日の国連安全保障理事会による対リビア飛行禁止区域設定決議に基づくもの。軍事介入に消極的とされた米国をフランスのサルコジ大統領が説得する形で実現したという。国連安保理決議は、カダフィ政権側の航空機や武装ヘリコプターによる反政権側の民衆攻撃を防ぐことを目的とする。カダフィ政権転覆までは目的にしない。

政権側の空軍力が減殺されたことで、リビア第2の都市であるベンガジなど東部(キレナイカ地方)を拠点にする反政権側が反攻に移った。3月28日の米国ABCニュースの報道によると、反政権側は東部の要衝であるアジュダビーヤを奪回した。リビアは日産165万バレル(2010年BP統計)の中堅産油国。軽質成分の多い良質な原油を産出することで知られる。油田は東部に集中しており、アジュダビーヤ近くにある港町ブレイカは主要な原油・ガスの出荷基地である。欧州はリビアから大量の原油・ガスを輸入している。リビア情勢に詳しい塩尻宏・元駐リビア大使は、「アジュダビーヤの帰趨は今後のリビア情勢に大きな影響を与える」と指摘する。その意味で反政権側によるアジュダビーヤ奪還の意味は大きい。

「オデッセイの夜明け作戦」の指揮を執った米国だが、「米国はリビアに戦略的重要性を持っていない」(ロバート・ゲーツ国防長官)という立場を崩していない。米国がアラブ世界で戦略的重要性を持っているのは、バーレーンとサウジアラビアの体制維持である。この2国を反政府デモから守ることが米国の国益である。米国は、リビアとバーレーン、サウジとでは民衆デモへの態度が異なる。「米国政策はダブルスタンダード」と呼ばれるゆえんである。米国はリビア軍事介入の指揮権をNATO(北大西洋条約機構)に移管する方向である。米国にとってリビアは、「欧州の問題」なのだ。

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