片や、ロシアから世界への輸出も大きな変化を迎えているが、これも中国の存在が大きい。実はロシアの石油輸出は数量ベースでは戦後も増え続けている。これは輸出先をEUやG7から中国そしてトルコ、インド、中東アフリカなどに振り替えたことの結果だ。
「数量ベースでは」というのは、新しい顧客開拓のためにロシアは原油を廉価販売しているという実情があるためである。
具体的に、ロシアのウラル原油は2023年2月時点で1バレル平均48ドルの価格で取引されているが、これは世界の原油取引のベンチマークであるブレント原油の83ドルよりだいぶ低い。
また、天然ガスに関してはパイプラインの高額な補修が必要になるため代替販売が進んでおらず、なんとか中国向けに回したり、LNGを世界向けに放出したりして、減少分の相殺が図られている。
それでも2022年のロシアの天然ガス輸出は2021年対比で25%も低くなっており、EUを失った影響の大きさが見て取れる。
やはり地政学リスクは経済を脆弱にする
以上のような状況を踏まえれば、欧州企業による経済制裁や自主的なボイコットは両国貿易の在り方を劇的に変化させている。こうした事実には2面性がある。1つはロシアの視点、もう1つはユーロ圏の視点だ。
まずロシアから見れば、自国への制裁に賛成していない貿易相手国に依存せざるをえない状況が続くことを意味する。
上で見たように、その代表格が中国だ。しかし、特定国への貿易依存は当然、経済全体の脆弱性を増すことになる。例えば中国経済が弱体化すればそのままロシア経済も落ち込むことになる。
また、これまで資源の主な輸出先だったユーロ圏を代替する国・地域は本当の意味ではまだ見つかっていない。既述の通り、いくら数量ベースで取引を増やしても新規顧客を開拓するために価格ベースでは切り下げれば、国全体としては薄利多売を強いられているのも同じだ。
また、経済活動を営む上で必要となるハイテク財などの入手もままならないため、生産性の改善も見込めない。
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