中国の自動車輸出「ロシア向け」が急増の必然 西側メーカー撤退で生じた市場の空白に浸透

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ロシア市場では中国車の存在感が急速に高まっている(写真は奇瑞汽車のロシア向けウェブサイトより)

中国製の自動車の輸出が増え続けている。中国の業界団体の全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)がまとめたデータによれば、2023年1月と2月の輸出台数は合計68万台と、前年同期比39%増加した。

注目すべきなのは、国別の輸出先のランキングでロシアが首位に浮上したことだ。ロシアへの輸出台数は1~2月だけで約8万台に上り、2022年の年間輸出台数の半分近くに達した。

中国の自動車メーカーによるロシア市場進出は、約15年前にまで遡る。当初は(低価格を売り物に)人気を博したものの、ロシア政府が関税を引き上げたため、中国メーカーは事業縮小を余儀なくされた。

ところが2022年以降、(ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁に対応した西側諸国の)多くの自動車メーカーがロシア市場から撤退。「その空白に中国メーカーが急速に浸透した」と、乗聯会の秘書長を務める崔東樹氏は解説する。

EVは欧州市場への輸出好調

クルマの動力別の輸出動向に目を移すと、台数ベースでは今もエンジン車が主体だが、伸び率ではEV(電気自動車)を中心とする「新エネルギー車」の勢いが上回る。1~2月の新エネルギー車の輸出台数は前年同期比57%増の25万7000台に上り、総輸出台数の38%を占めた。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

国別の新エネルギー車の輸出先では(ヨーロッパ最大の自動車荷揚げ港がある)ベルギーのほか、イギリス、スペインなどヨーロッパ市場向けの好調が目立った。なかでもスペインには、1~2月だけで2022年の年間輸出台数の半数近い新エネルギー車が輸出された。

本記事は「財新」の提供記事です

新エネルギー車のメーカー別輸出台数では、2月に4万479台を輸出したテスラが首位の座を維持した。第2位は国有自動車最大手の上海汽車集団の同1万6827台、第3位は中国のEV最大手である比亜迪(BYD)の同1万5000台だった。

(財新記者:張粲)
※原文の配信は3月28日

財新 Biz&Tech

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