北見に戻り、教室に入ると、驚くほど周りの反応が何もなく、本当に以前と同じ日常が過ぎていく。誰も胸のことに関して冗談でも触れもしないし、反応もしない。
「今思うと、どう反応していいのか誰もわからなかったんだと思います。今ほど(トランスジェンダーに関する)情報もないですし、自分でもどうしていいかわからなかったので」
今からわずか9年前のこととはいえ、性同一性障害のことは話題に上がることは少なかった。だからこそ、誰も何も言わないという態度で日々を送ったのであろう。ましてや女子高だ。女子高に男性になりたい子がいるとは普通は思わないだろう。
かくして、らいちの見た目は完全に男になった。
戸籍上も「完全な男性」として生まれ変わる
駆け足となるがその後、らいちは札幌で専門学校を卒業。22歳の頃、名古屋の病院で下半身の手術を行い、完全に男となる。裁判所にて性別の変更も受理され、戸籍上も晴れて男性となったわけだ。
それから、らいちは男として青春を取り戻しにいくことになる。そこで思いついたのがメンズアイドルだった。
「男としてやりたいことを考えたときに『アイドルになれば全部できる』って思ったんです。そのときは、メン地下のこととか本当に何も知らなくて。たまたまやったら、それだと後から知りました(笑)」
「本当にたまたまですね。札幌から出たいと思って行った先が仙台だったんです」
何かに導かれるように辿り着いた仙台。当時はまだ、メンズアイドル未開の地であった。
正確には、らいちがグループを立ち上げた当時は、ライバルがいない状態だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら